人参(にんじん)
基原
ウコギ科(Araliaceae)のオタネニンジンPanax ginseng C.A.Meyer(Panax schinseng Nees)の細根を除いた根又はこれを軽く湯通ししたもの
主な薬理
人参は、病後の体力低下、疲労倦怠を主訴とする補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯や、胃腸疾患に適応される人参湯、六君子湯に配合される生薬です。
人参単独では、以下に示す抗疲労作用、副腎皮質ホルモン様作用、コルチコステロン分泌亢進作用が報告されています。
活性成分
- [抗潰瘍作用]2,3)
- ギンセノシド(ginsenosideRb1,Rg2)
- [血中脂質低下作用]4)
- ギンセノシド(ginsenosideRb2,Rc,Rg1)
- [副腎皮質ホルモン様作用]5)
- ギンセノシド(ginsenosideRb1,Rb2,Rc,Rd)
- [コルチコステロン分泌亢進作用]6)
- ギンセノシド(ginsenosideRb1,Rb2,Rc,Rd)
- [中枢抑制作用]7)
- ギンセノシド(ginsenosideRb1)
- [中枢興奮作用]7)
- ギンセノシド(ginsenosideRg1)
- [抗疲労作用]7)
- ギンセノシド(ginsenosideRg1)
- [鎮静作用]7)
- ギンセノシド(ginsenosideRg1)
- [小腸輸送能亢進状態改善作用]8)
- ギンセノシド(ginsenosideRg1,Rd)
人参サポニンには、酢酸潰瘍や水浸ストレス潰瘍に対する治癒効果(抗潰瘍作用)2、3) 、血中脂質低下作用4) 、副腎皮質ホルモン様作用5) 等が知られています。
そのうち、ギンセノシドRb1、Rb2、Rc、Rd、Reにはコルチコステロン分泌亢進作用が報告されています6) 。
一般的にギンセノシドRb1などのプロトパナキサジオール類には中枢抑制作用が、ギンセノシドRg1などのプロトパナキサトリオール類には緩和な中枢興奮作用が認められ、抗疲労作用、鎮静作用が報告されています7) 。
このように、人参のサポニン類には、相反する生理活性を有することにより生体機能の向上に機能しています。
その他、オレアナン型サポニンであるギンセノシドRoには抗炎症作用が報告されています9) 。
一方、非サポニン画分にもアロキサン糖尿病モデルに対する血糖降下作用が見いだされています10) 。
また、最近の大建中湯の薬効解明研究において、ギンセノシドRb1及びRdに小腸輸送能の亢進状態を改善する作用が認められました8) 。
引用
1) 北川 勲ら:薬学雑誌,103,612(1983).
2) K.Takagi,et al. :Jpn.J.Pharmacol.,19,418(1969).
3) K.Takagi,et al. :Jpn.J.Pharmacol.,18,99(1968).
4) 山本昌弘ら:代謝,10,646(1973).
5) 谷澤久之ら:薬学雑誌,101,169(1981).
6) S.Hiai,et al. :Endocrinol.Jpn.,26,661(1979).
7) 柴田承二:現代東洋医学,3,62(1982).
8) K.Hashimoto,et al. :J.Ethenopharmacology.,84,115(2003).
9) H.Matsuda,et al. :Planta Medica,56,19(1990).
10) M.Kimura,et al. :J.Pharm.Dyn.,4,402(1981).
11) K.Takagi,et al. :Jpn.J.Pharmacol.,22,245(1972).
12) H.Saito,et al. :Jpn.J.Pharmacol.,23,43(1973).
13) 山本昌弘ら:治療学,28,33(1994).
14) 寒川慶一ら:薬学雑誌,115,241(1995).
15) 山口啓之ら:薬学雑誌,108,872(1988).
16) 岡田 稔:月刊漢方療法,2,390(1998).
17) 松田秀秋ら:Natural Medicines,53,217(1999).
18) 北川 勲ら:日本生薬学会第28回年会講演要旨集,p.52(1981).
人参(にんじん)が使われる代表的な漢方処方
- 小柴胡湯(しょうさいことう)
- 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
- 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
- 麦門冬湯(ばくもんとうとう)
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
- 人参湯(にんじんとう)
- 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
- 木防已湯(もくぼういとう)
- 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
- 六君子湯(りっくんしとう)
- 釣藤散(ちょうとうさん)
- 十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)
- 炙甘草湯(しゃかんぞうとう)
- 帰脾湯(きひとう)
- 参蘇飲(じんそいん)
- 女神散(にょしんさん)
- 茯苓飲(ぶくりょういん)
- 柴陥湯(さいかんとう)
- 四君子湯(しくんしとう)
- 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
- 竹じょ温胆湯(ちくじょうんたんとう)
- 柴朴湯(さいぼくとう)
- 大防風湯(だいぼうふうとう)
- 大建中湯(だいけんちゅうとう)
- 当帰湯(とうきとう)
- 温経湯(うんけいとう)
- 人参養栄湯(にんじんようえいとう)
- 小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうかききょうせっこう)
- 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
- 柴苓湯(さいれいとう)
- 茯苓飲合半夏厚朴湯(ぶくりょういんごうはんげこうぼくとう)
- 黄連湯(おうれんとう)
- 啓脾湯(けいひとう)
- 清暑益気湯(せいしょえっきとう)
- 加味帰脾湯(かみきひとう)