当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
公開日:2022.03.03
カテゴリー:外来でよく使われる漢方薬
監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)
構成生薬
- 当帰(とうき)
- 川芎(せんきゅう)
- 芍薬(しゃくやく)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 蒼朮(そうじゅつ)
- 沢瀉(たくしゃ)
作用の特徴
骨盤内の微小循環(細動脈、毛細血管、細静脈部分の循環)障害、貧血、下肢のむくみ・冷えなど、血(けつ)の不足や巡りを改善し、体を温める
対象となる症状
- 月経不順、月経異常、月経痛などの月経関連症状
- 子宮筋腫
- 子宮内膜症
- 鉄欠乏性貧血
解説
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)とともに「婦人科三大漢方薬」に数えられます。痩せ型、色白で体力のないタイプの人に有用です。
骨盤内の微小循環の改善に役立つため、子宮や卵巣といった婦人科関連の症状の軽快に効果を発揮します。また、めまい、立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴りなどの改善にも使われます。そのほか、下肢のむくみや冷え、鉄欠乏性貧血にも有効です。特に鉄欠乏性貧血に対しては、鉄剤と同等のヘモグロビン値の改善効果があったという報告もあり1)、鉄代謝になんらかの影響を与えている可能性が考えられます。
妊婦にも使用でき、妊娠中のむくみや痔、腹痛の改善に使われることもあります。
エビデンス情報
貧血の改善
子宮筋腫で医療機関を受診した患者で低色素性貧血を示した23例を、当帰芍薬散エキス顆粒を投与する当帰芍薬散群とクエン散第一鉄ナトリウムを経口投与する経口鉄剤群の2群に分け、ランダム化比較試験を行いました2)。8週後の試験終了後、血球数および貧血の検査項目の数値については経口鉄剤群で顕著な改善が認められたものの、当帰芍薬散群では顕著な改善は認められませんでした。一方、顔面蒼白、さじ状爪、めまいなどの貧血によって起こる症状については、5段階スコアで評価したところ当帰芍薬散投与群で有意に改善されました。また、当帰芍薬散投与群では副作用を認めませんでした。