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桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

公開日:2022.02.15
カテゴリー:外来でよく使われる漢方薬 監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)

構成生薬

作用の特徴

微小循環障害(毛細血管などにおける血液の流れの滞り)の漢方薬における第一選択
微小循環障害で併発する炎症の抑制

対象となる症状

解説

 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は「女性の三大処方」と呼ばれる漢方薬のうちのひとつで、漢方医学でいう血の流れが悪く滞っている「瘀血(おけつ)」の状態のときに使うとよいとされてきました。
 それは、桂枝茯苓丸が、微小循環障害(毛細血管などに流れる血液の流れが悪い状態)を改善するという特徴があるためです。骨盤の中の微小循環障害だけでなく、身体の各部位の微小循環障害を改善することがわかってきています。
 そのため、桂枝茯苓丸は、月経関連異常や更年期障害が有名な適応ですが、手術後の創部または下肢深部における静脈血栓症、外傷後の腫脹・皮下出血など微小循環障害が関わっているとされているものについても使われています。新型コロナワクチンの副反応である上腕の筋肉痛にも用いられます。

エビデンス情報

ホットフラッシュと冷えに対する桂枝茯苓丸とホルモン補充療法の有効性の比較

 過去3か月以内にホルモン補充療法を受けていない、46~58歳の閉経女性で、冠動脈異常、血栓性疾患、脳梗塞、高血圧、腎疾患、アレルギー疾患を持たないホットフラッシュを有する352例に対し、桂枝茯苓丸投与群とホルモン補充療法群とでランダム化比較試験を行い、レーザードップラー装置で顎と指先、つま先の3か所で末梢血流量を測定し、治療前後で比較しました1)
 両群ともに顎および指先での血流は低下しましたが、つま先においては桂枝茯苓丸投与群では血流の有意な増加がみられたのに対し、ホルモン補充療法群では減少が認められました。このことから、桂枝茯苓丸は特に下肢の冷えがある場合に有効だと考えられます。

下肢深部静脈血栓症のむくみに対する桂枝茯苓丸の治療効果

 2003年1月~2007年12月に超音波検査で下肢深部静脈血栓症と診断された12例に対し、西洋学的抗凝固療法に桂枝茯苓丸を併用した群と非併用群でランダム化比較試験を行いました2)。投与開始より半年後、症状があるほうの脚とないほうの脚の下腿周径差を比較しむくみの改善を評価したところ、周径差は両群ともに改善したものの、改善率については桂枝茯苓丸併用群において有意に高い結果となりました。

参考

  • 1) Ushiroyama T, et al. Am J Chin Med 2005; 33: 259-267
  • 2) 内田智夫. 静脈学 2009; 20: 1-6

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