牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
公開日:2021.03.30
カテゴリー:外来でよく使われる漢方薬
監修:井齋偉矢先生(日高徳洲会病院院長/サイエンス漢方処方研究会理事長)
構成生薬
- 地黄(じおう)
- 牛膝(ごしつ)
- 山茱萸(さんしゅゆ)
- 山薬(さんやく)
- 車前子(しゃぜんし)
- 沢瀉(たくしゃ)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 牡丹皮(ぼたんぴ)
- 桂皮(けいひ)
- 附子(ぶし)
作用の特徴
高齢者の運動器・泌尿器・生殖器の衰えなどの「下半身」の病態に有用
対象となる症状
- 坐骨神経痛など下肢の痛み
- 老化による腰痛
- 下半身のしびれ
- 夜間の頻尿など排尿困難
- 末梢神経障害
解説
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)は、高齢の特に男性で、夜に何度もトイレに行くというというような頻尿の改善によく用いられます。また、下半身のしびれ、坐骨神経痛など、主に「下半身」の病態に使われる漢方薬です。
特に高齢者の末梢神経炎と考えられるしびれや、糖尿病性神経障害に伴うしびれ、さらに、抗がん剤を服用した際に起こる下半身のしびれには有用性が高く、その作用機序も明らかになってきています。
しびれの症状がある場合、ビタミンB12系の薬を処方されていることが少なくありませんが、あまり効果が出ない人も多く、その場合、牛車腎気丸に変え、附子末を追加し、2週間程度服用してみると、効果があるかどうかを見極められます。
夜間の頻尿の場合は、効き始めるのに時間がかかるため、2か月ほど服用する必要があります。
エビデンス情報
大腸がん化学療法に伴う末梢神経障害(手足のしびれ)
オキサリプラチンを使用した化学療法を完遂した進行・再発大腸がん患者90例を対象にした後ろ向き試験では、牛車腎気丸が末梢神経障害の発生を抑制する可能性が報告され1)、その後行われた22例の小規模前向き試験でも牛車腎気丸の有効性が再び示唆されました2)。進行・再発大腸がん患者を対象としたプラセボ対照多施設二重盲検前向き試験の第Ⅱ相試験(GONE試験)では、解析症例89例において末梢神経障害のグレード2以上の発現率を軽減させ、グレード3が半減することが示されました3)。一方、大腸がん患者310例を目標症例数にした第III相試験(GENIUS試験)では、中間解析で有効性が認められずに試験中止に至っています4)。