高齢者
若年・中年層に比べて
副作用が現れやすい。
高齢になると、高血圧や糖尿病、高脂血症といった生活習慣病や、腰痛、変形性膝関節症といった整形外科疾患、さらに眼科や耳鼻科、皮膚科…といくつもの医療機関に通うようになる場合も少なくありません。
加齢によって筋力や肺活量、病気に対する抵抗力が下がることを「老化」といい、一般的に40代からそのスピードが速くなるといわれています。老化が進むと、全身の臓器の機能が低下するため、さまざまな疾患が複合して起こるようになります。
東京都で行われたレセプト調査では、後期高齢者(75歳以上)の約8割に2疾患、約6割に3疾患以上の慢性疾患があることが明らかになっています1)。
漢方薬は、ひとつの薬にいくつもの生薬が含まれているため、一剤で複数の症状を改善することも期待できます。そのため、漢方薬を用いることで、今まで服用していた薬の種類を減らすことも可能になります。
しかし、高齢者は、特に疾患が診断されていない場合でも、腎機能や肝機能などの生理機能が低下していることがあります。そのため、薬を代謝する能力も低下していて、若年・中年層に比べて副作用が現れやすくなっており、作用が穏やかな漢方薬であっても、医師は控えめな分量から投与を開始していくことが少なくありません。
また、高齢者は漢方薬の処方における「補剤」(ほざい=食欲を増したり、体力を増強したりするための薬剤)に関してはあまり問題ないのですが、「瀉剤」(しゃざい=人体に蓄積したものを取り除く性質の薬剤)に対する反応が出やすく、消化器症状、自律神経症状などの副作用を生じやすい傾向があります。適切な処方をしてもらうためにも、自分の日頃の体調や症状などを医師に詳しく説明することが大切です。なお、体調の変化や疑問があった場合は、必ず医師、薬剤師に相談しましょう。
- 参考
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- 寳滿 誠ほか:産業医科大学雑誌 2001;23(3):285-205