漢方薬の活躍:QOLの向上に寄与するケース
公開日:2010.07.05
カテゴリー:漢方薬とは
監修:秋葉哲生先生(あきば伝統医学クリニック院長)
手術後の早期退院を可能にしたり、西洋薬の副作用を軽減するなど、漢方薬には、患者さんのQOL(Quality of Life=生活の質)を向上させる目的で使用されるケースも増えてきました。
たとえば、開腹大腸手術の患者さんの場合、大建中湯(だいけんちゅうとう)を投与した場合、腸の機能が回復してガス(おなら)が出るまでの期間と術後入院日数は、投与していない場合に比べ、減少するというデータがあります※1。
また、C型慢性肝炎の患者さんに有効なインターフェロン/リバビリン療法(ウィルスをインターフェロンやリバビリンという薬剤で排除する治療法)では、溶血性貧血(赤血球が破壊されて起こる貧血)などの副作用により治療を断念せざるを得ない場合がありますが、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)を投与した場合、ヘモグロビン減少量、赤血球減少数が軽減するということが分かってきました※2。
このように、漢方薬は、西洋医学的な治療による諸症状や副作用を軽減する働きがあり、各種療法を継続するために貢献できることが明らかになっています。漢方薬の薬理作用の科学的な探索・解明がさらに進めば、他にも患者さんのQOL向上につながる使用方法が生まれていくでしょう。
※1:今津嘉宏『Progress in Medicine』、壁島康郎『日本消化器外科学会誌』
※2:庄幸彦『Journal of Gastroenterology』