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麻黄とは?麻黄を含む漢方薬も紹介

公開日:2025.03.12
カテゴリー:漢方薬とは 監修:秋葉哲生先生(あきば伝統医学クリニック院長)

麻黄(まおう)とは、葛根湯や防風通聖散、小青竜湯といった、よく使われる漢方薬にも含まれている生薬です。麻黄にはさまざまな薬効があり、他の生薬と組み合わせることで薬効が変化します。しかし、麻黄に含まれる成分(エフェドリン)は神経を刺激する作用があるため、注意が必要なケースがあります。ここでは、麻黄の薬効や副作用について説明するとともに、麻黄を含む代表的な漢方薬を紹介します。

麻黄とは

麻黄(まおう)は、漢方薬に配合される生薬の一種です。中国や中央アジアに生えているマオウ科の丈が低い草本植物であり、地上に出ている細い円柱状~楕円上の茎が生薬として使われます。日本国内には草麻黄 (Ephedra sinica)を原料とした生薬が主に流通しています。

麻黄には総アルカロイド(エフェドリン、プソイドエフェドリン)が0.7%以上含まれます。エフェドリンは体内で分泌されるホルモンであるエピネフリン(別名 アドレナリン)の構造と似ているため、交感神経と中枢神経を刺激する作用を持ちます。

麻黄を含む漢方薬の効能

麻黄の薬効としては発汗、解熱、咳止め、利尿、鎮痛などが知られていますが、漢方薬の処方として組み合わせる他の生薬の影響を受けて引き出される薬効が変わります。

例えば、桂皮(けいひ)という生薬を組み合わせると発汗が促されます。また、杏仁(きょうにん)や石膏(せっこう)と配合すると咳止めの薬効が強調されます。利尿や鎮痛のためには朮(じゅつ)や薏苡仁(よくいにん)が配合されます。

麻黄を含む漢方薬の注意点(副作用)

麻黄に含まれるエフェドリンは交感神経と中枢神経を興奮させる作用があるため、麻黄を含む漢方薬を服用すると、興奮、血圧上昇、動悸、頻脈(心拍数の増加)、発汗過多、排尿障害などの副作用が起きる可能性があります。特に心臓や腎臓、甲状腺などの持病をお持ちの方は、漢方薬を服用する前に医師や薬剤師に相談しましょう。

また、エフェドリン類を含む、モノアミン酸化酵素阻害剤、甲状腺製剤、カテコールアミン製剤、キサンチン系製剤などの西洋薬と一緒に麻黄を含む漢方薬を服用すると、神経刺激作用が増強されてしまう可能性があるので、注意が必要です。

漢方薬は安全性が高いという印象をお持ちかもしれません。しかし、持病や西洋薬との飲み合わせによっては、副作用のリスクが高まる場合があります。麻黄を含む漢方薬を飲んでいる場合は、診察の際に医師に伝えるようにしましょう。

麻黄が使われる代表的な漢方処方

ここでは、麻黄を含む代表的な漢方薬について簡単にご紹介します。

葛根湯(かっこんとう)

葛根湯は比較的体力がある人に対して、風邪の初期に発汗を促して解熱をもたらすとともに、首・肩の緊張(コリ)の緩和や鎮痛のために用いられます。麻黄を加えることで発汗を促す作用を持たせています。

麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)

麻黄附子細辛湯は主に虚弱な高齢者の風邪で、悪寒や寒気が強い場合に用いられます。体内が冷え切っており、新陳代謝が低下しているような人に対して、附子と細辛でからだを温め、麻黄で熱と水を体外に追い出します。

葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)

葛根湯加川芎辛夷は、葛根湯に鼻炎や蓄膿に効果のある生薬(川芎、辛夷)を加えた漢方薬です。比較的体力がある人の鼻炎や鼻づまり、副鼻腔炎などに対して用いられます。

小青竜湯(しょうせいりゅうとう)

小青竜湯はくしゃみ、鼻水などを伴う初期の風邪のほか、花粉症(アレルギー性鼻炎)や気管支炎などに用いられます。麻黄は熱を下げ、気管支の緊張を和らげる目的で配合されています。

麻黄湯(まおうとう)

麻黄湯は、麻黄を主成分とする漢方薬で、発汗とともに病的な熱や水を体外に追い払う作用があります。比較的体力がある人に対して、風邪の初期に発汗を促して解熱をもたらすとともに、節々の痛みを和らげたり、咳を止めたりするために用いられます。

麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

麻杏甘石湯は、麻黄湯に含まれる生薬(桂皮)を別の生薬(石膏)に置き換えた処方です。咳を鎮め、体内の熱を取り除くとともに、利尿作用もあります。気管支炎や気管支喘息、肺炎などに用いられます。

五虎湯(ごことう)

五虎湯は、麻杏甘石湯に浮腫を改善する働きを持つ生薬(桑白皮)を加えた漢方薬です。風邪、気管支炎、気管支喘息などに用いられます。

神秘湯(しんぴとう)

神秘湯は気管支喘息、小児喘息、気管支炎などに用いられます。麻杏甘石湯から石膏を除外し、気を巡らせて消化管の働きを高める生薬や気うつを改善する生薬が加えられています。胸部の圧迫感で苦しい人や気うつ傾向にある人向けです。

麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)

麻杏薏甘湯は、麻黄湯に含まれる生薬(桂皮)を別の生薬(薏苡仁)に置き換えた漢方薬で、関節リウマチや神経痛に用いられます。桂皮を除くことで、発汗作用ではなく痛み止め(鎮痛)に重きを置いています。薏苡仁は冷えにより生じた体内の水分を取り除きます。

薏苡仁湯(よくいにんとう)

薏苡仁湯は、変形性関節症や関節リウマチ、神経痛などに用いられます。薏苡仁と蒼朮によって患部の湿を取り除き、麻黄と桂皮でからだを温めます。さらに当帰、芍薬、甘草の作用によって痛みを鎮めます。

越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)

越婢加朮湯は関節リウマチ、浮腫、腎炎、目や皮膚の病気(分泌物が多い症状)などに用いられます。麻黄に石膏を組み合わせると汗を抑える作用が得られ、皮膚からの分泌物を抑制します。蒼朮は皮膚や関節の水毒を取り除きます。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

防風通聖散は肥満対策の漢方薬として有名ですが、便秘や高血圧、皮膚の病気などでも用いられます。体力のある人向けの漢方薬です。生薬が18種類も配合されており、その中で麻黄は皮膚から病因を排出する作用があります。

五積散(ごしゃくさん)

五積散は腰痛、坐骨神経痛、下腹部痛、関節痛、月経痛、更年期障害などに用いられます。五積とは5つの邪気(寒、痰、気、血、食)が体内に積滞する状態を指し、麻黄はこのうち寒を取り除く働きをします。

参考
  1. 東京生薬協会.マオウ(麻黄).新常用和漢薬集
  2. 日本薬学会 生薬天然物部会.麻黄剤.薬学用語解説
  3. 山田陽城 他(編).薬学生のための漢方医薬学,南江堂,2009.

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