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漢方を活かす食養生 No.12 脱水と血圧上昇を伴う夏バテ

公開日:2020.04.24
カテゴリー:漢方ニュース
 食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。食養生では、食物を体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方と、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分ける「五味」という考え方に基づいて食材をとらえます。
 ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。

 めまいや口渇とともに血圧上昇を伴う脱水が著明な夏バテと判断されるケースには、輸液や薬物療法、さらに食事などで循環血漿量の補充が必要な場合があります。今回は、循環血漿量を補う働きのある食材を使った食事指導とともに、再発対策として生活指導を行った例を紹介します。

 70代の女性、身長は140センチ、体重38キロの小柄な方です。ここ数日、暑い日が続いていましたが、昔ながらの習慣で冷房はつけずに寝ていました。今朝起きるとめまいがして、血圧を測ると160/120mmHgと高値で、食欲もなく、口が渇くといいます。今までは特に血圧が高いといわれたことはなく、年齢の割には元気であるといわれていたそうです。受診時には、血圧が148/108mmHg。目が落ち込んで、舌が乾燥していました。昨日、夜間に汗をかいたかと尋ねると、たしかに寝苦しくて汗をかいたといいます。しかし「畑仕事のあとはいつもこんなもんだ」とのこと。体の状態を診ると、やや炎症反応がありましたが、脱水がひどく、夏バテと判断しました。

 まず、点滴をゆっくりと行い、清暑益気湯(せいしょえっきとう)と抗生物質を処方しました。循環血漿量を増やすには腎臓の機能を回復させる必要があります。漢方の食事では、前回の復習になりますが、うなぎや葛根湯(かっこんとう)で用いる葛の根、玄米、豆乳です。その他に、山芋、トマト、ゆり根、きくらげ、しめじ、桃、びわ、柿、梅、リンゴ、すもも、すいか、みかんなどの野菜類や果実類、すっぽん、なまこ、どじょうなどの魚介類、さらにはちみつ、砂糖、お茶も細胞外液を中心とする循環血漿量を増やす働きがあります。そこで以下のような食事指導を行いました。

レタスと豚肉のゆでシャブサラダ

材料(4人分)
レタス 1/2個
薄切り豚肉 150g
油揚げ 1枚
◇タレ
 しょうゆ 大さじ5
 みりん 大さじ3
 レモン汁 大さじ2
 酢 大さじ2と1/2
作り方
  1. 鍋で熱湯を沸かし、レタスを1枚ずつくぐらせ、すぐ冷水に放つ。豚肉も熱湯に通し、常温で冷ます。油揚げもゆでて、油抜きをする。
  2. レタスは1枚を半分に切り、根元のところからくるっと巻き、一口大にする。油揚げは2cm角に切る。
  3. 器に盛り、あわせたタレをかける。
  4. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 さらに、もう一品。

緑茶の和菓子

材料(5個分)
粉末緑茶 大さじ1
200ml
葛粉 大さじ1
アガー 小さじ1
砂糖 大さじ1
コンデンスミルク 適量
作り方
  1. 水の中に葛粉、アガー、砂糖、粉末緑茶を加えて混ぜ、火にかける。
  2. 木べらで底をかき混ぜながら、もったりして、ツヤが出たら火からおろし、水でぬらした型に流し固める。好みでコンデンスミルクをかける。
  3. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 アガーとは、海藻が原料の植物性ゼリーの素です。粉末寒天、糸寒天でも作ることができます。

 以上のような食事を1週間摂取していただいたところ、舌の乾燥が取れ、血圧は132/90mmHgになり、症状も改善しました。薬も終了しましたが、また同じことを起こす可能性があったので、食事をしっかり摂り、寝室にエアコンを入れるよう指導しました。

文献
  1. 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.38-39.

(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shinmai-books.com/)

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