漢方について相談できる病院検索 漢方について相談できる病院検索

漢方を活かす食養生 No.10 高血圧の人のための食事療法

公開日:2020.04.24
カテゴリー:漢方ニュース
 食養生とは、健康を保ち長寿を全うするために、日常よく使う食材の性質や働きを知り、健康のために効果的な食生活を送ることです。食養生では、食物を体を冷やす順に寒、涼、平、温、熱で表す「五性」という考え方と、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味に分ける「五味」という考え方に基づいて食材をとらえます。
 ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。

 高血圧で、さまざまな降圧薬を使っても十分に血圧が下がらないケースに、漢方薬と食養生を組み合わせると効果がみられる場合があります。減塩とともに、血圧上昇にかかわるホルモンを抑制する働きのある食材を使った食事指導を紹介します。

 50代の女性が、高血圧で来院されました。血圧は、158/102mmHgで、頭痛がすると訴えられました。計算上では1日の塩分量は12gとなっていました。塩分の排せつのため、西洋薬を処方しましたが、拡張期血圧が下がりきらなかったので、七物降下湯(しちもつこうかとう)を処方し、食事療法も指導しました。

 高血圧の方の1日の塩分摂取量の目安は6g以下にすることとされていて、これを守ることは重要です。また、高血圧を引き起こす要因のひとつとして、腎臓から出る、血圧を上げるホルモン「レニン・アンジオテンシン」を抑制する食材を摂ることも重要です。レニン・アンジオテンシンを抑制する食材は、漢方医学的に「腎を強くする薬膳」といわれ、アワやごま、豆乳、山芋、さつまいも、海苔、栗、くるみ、ブドウなどがあります。これら以外にも、特にレニン・アンジオテンシンを抑制する食材には、蕎麦、小豆、大豆、そら豆、味噌、納豆などの穀類や豆類、さといも、アスパラ、からし菜、もやし、なす、ごぼう、トマト、パセリ、セロリ、かぼちゃなどの野菜類、いか、サザエ、うに、牡蠣、アサリなどの魚介類、キウイ、いちご、パイナップル、はっさく、ザクロなどの果物類、梅干しやヨーグルト、ワイン、お茶、山椒があります。

 塩分の摂取量に注意して、以下のような食事指導を行いました。

ブリの味噌サラダ

材料
ブリの刺身 130g
玉ねぎ 1/4個
サラダほうれん草 2株
◇味噌酢
 減塩味噌 大さじ3
 酢 大さじ1と1/2
 砂糖 大さじ1
 練りがらし 小さじ1/2
 みりん 大さじ1
作り方
  1. 玉ねぎは薄切りにして水に放つ。ほうれん草も食べやすい大きさに切っておく。
  2. ブリの刺身を薄めに切り、野菜と一緒に盛り、味噌酢をかける。
  3. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 さらに、もう一品。

きのことアスパラの土佐酢和え

材料
エリンギ 5本
アスパラ 100g
◇土佐酢
 しょうゆ 50ml
 みりん 50ml
 酢 50ml
 水 50ml
 かつお節 10g
作り方
  1. エリンギ、アスパラを網に乗せ、直火で焼く。
  2. 食べやすい大きさに切り、土佐酢をかける。
土佐酢の作り方
  1. 沸騰させたお湯にかつお節を入れて、すぐ火を止め、10分そのままにし、こして50mlのだしを取る。
  2. 他の調味料を合わせてさっと煮立て、冷めてからしょうゆ差しに入れる。
  3. ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。

 きのこはお好みでエリンギ以外に他の物を加えても美味しく食べることができます。土佐酢は作り置きしておくといろいろなサラダに使える便利な調味料です。

 以上のような食事を3か月続けていただいたところ、血圧が130/70mmHgになりました。服用していた薬は中止としましたが、その後も血圧は130〜120/70〜80mmHgで安定しています。現在も食事療法と七物降下湯を継続中です。

文献
  1. 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.86.

(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)

水嶋丈雄(みずしま たけお)先生
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
医療法人水嶋クリニック院長、NPO法人東洋医学研究所所長。
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。

食べて元気になる 漢方ごはん
解説:水嶋丈雄
料理:横山タカ子
撮影:山浦剛典
発行社:信濃毎日新聞社(https://shinmai-books.com/)

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeとしての意見・見解を示すものではありません。
記事内容・画像・リンク先に含まれる情報は、記事公開/更新時点のものです。掲載されている記事や画像等の無断転載を禁じます。

外部サイトへ移動します

リンク先のウェブサイトは株式会社QLifeが運営するものではないこと、医療関係者専用であることをご了承ください。