漢方を活かす食養生 No.6 脂質異常症を改善する
ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。
脂質異常症(高脂血症)の改善には、食事療法と運動療法が基本ですが、なかなか実践できないことが多いものです。食事療法を実践するには、東洋医学の知恵を加味すると案外うまくいくことがあります。ぜひ、お試しください。
56歳男性が、人間ドックにて脂質異常症を指摘され、来院されました。
受診時に、高コレステロール血症の薬を勧めましたが、過去に具合が悪くなったことがあると拒否され、漢方薬で何とかしてほしいとのことでした。便秘傾向があるとのことで大柴胡湯(だいさいことう)を処方し、さらに下記のような食事療法をすすめました。
コレステロールを下げる食材は、五味で甘味を押さえる苦味がよいとされています。苦味食材には、アルカロイドが含まれ、体の余分なものを排出する効果があるとされています。苦味で寒性の食品ではコーヒー、お茶、たけのこ、ごぼう、にがうり、苦菜、高菜、うどなどがあげられます。
苦味の平性から温性は菊花、銀杏、よもぎ、ふき、タラの芽などがあげられます。春の山菜が多いのが特徴で、春の七草という行事は、仕事にとりかかる前に冬の間にたまった脂肪や余分な水分を取り除こうという昔の人の知恵です。実際にコーヒーやお茶に含まれるクロロゲンやカテキンは脂質異常症に対して特定健康保健食品になっています。うど、タラの芽には血糖降下作用があるといわれ、桑の葉から抽出されたエキスが降糖剤にも用いられています。
脂質異常症の改善を目標に、主食に白滝ご飯をとるよう指導しました。
白滝ご飯
米 | 2合 |
---|---|
白滝 | 200g |
- 白滝は水洗いし、鍋にかぶる程度の水を入れ、沸騰させてから5分ゆでる。湯を切りフードプロセッサーに入れて、米粒のように細かくする。
- 洗って水加減した米に入れ一緒に炊く。
- ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。
白滝はノンカロリーで腹持ちもよく、満腹感が得られる優れた食材です。次に、副食には五目うま煮を紹介しました。
五目うま煮
豆腐 | 1丁 |
---|---|
干ししいたけ | 10枚 |
にんじん | 1本 |
根曲がり竹 | 7本 |
さやえんどう | 50g |
しいたけのもどし汁 | 400ml |
煮干し | 5g |
◇A | |
しょうゆ | 大さじ2 |
みりん | 大さじ1 |
酒 | 大さじ1 |
- 干ししいたけはサッと洗い、たっぷりの水に一晩浸す。
- 豆腐は30分ほど水切りをする。
- 豆腐は、石付きをとった干ししいたけと、もどし汁、煮干し、乱切りにしたにんじんを加え、干ししいたけがふっくらするまで煮る。
- 根曲がり竹の皮をむいて加え、豆腐も4切れに切って加え、調味料Aで味を整える。
- 最後にさやえんどうをサッと煮て加える。
- ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。
根曲がり竹は長野の独特の食材で、春にはスーパで売っており、自分で山に取りに行く人も多くいらっしゃいます。なければたけのこで代用しても良いでしょう。また、お好みで山菜をくわえるとさらに脂質異常に効果がでます。長野県では食材を山に取りに行く人が多く、坂道を上り下りすることで足腰が鍛えられ、山菜を食することが健康寿命の一因になっているとも考えられます。このように、地元の食材を用いて指導すると、スムーズに食生活を改善できる傾向があります。以上の食事を3か月続けてもらった後、男性は、体重が3kg減少しました。その後も食生活を改善しながら治療を続けています。
- 文献
-
- 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.81-82.
(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。