漢方を活かす食養生 No.5 免疫のバランスを整える
ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。
免疫は生体を守るために大切な機能ですが、時に過剰状態となることがあります。免疫細胞のバランスが崩れると、がんやアレルギー性疾患が問題となることがあります。今回は、がんで手術後の患者さんの食養生の話です。
56歳女性が、偶然右の乳房にしこりを発見しました。当院を受診した後、すぐに総合病院の乳腺外科で手術を行いました。術後はホルモン療法を受けましたが、食事の相談をしたいと、再び来院されました。
漢方薬は、当帰や川芎といった女性ホルモン系の生薬を含む補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を処方しました。
免疫の調整には酸味の発酵食品、苦味のきのこ類、甘味のファイトケミカル、辛味のミネラルやビタミン類、塩味の微量元素が必要です。
いわゆる玄米菜食は、免疫細胞の材料となるアミノ酸が不足するため要注意です。
ファイトケミカルとは野菜や植物成分由来の抗酸化作用をもつポリフェノールなどの成分を含む食品の総称です。
ポリフェノールを含む食品には、ブルーベリー、ぶどう、大豆、セロリ、パセリ、ピーマン、緑茶、果実類、カカオ、ブロッコリー、玉ねぎ、柑橘類があります。カロテノイドを含むものには、にんじんやかぼちゃ、トマト、みかん、ほうれん草、スイカ、とうもろこしがあります。それ以外に、だいこんやわさび、キャベツにもファイトケミカルが含まれています。
そして、女性ホルモン系の刺激になるのは、大豆やごぼう、さつまいも、黒豆、いんげん豆、枝豆、さやえんどう、菊の花、山茱萸(さんしゅゆ)、青しそ、タアサイ、黄にら、もやし、アボカド、ザクロ、山椒、オオバコ、どくだみなどがあります。
主食は加圧鍋で調理した玄米食がおすすめです。
玄米の薬膳がゆ
玄米 | 1合 |
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水 | 1L |
長芋 | 150g |
スプラウト | 適量 |
めんつゆ | 適量 |
- 玄米は洗って一晩水に浸し、1Lの水でゆっくり柔らかくなるまで煮る。
- 長芋はすりおろし、スプラウトはサッとゆでてきざみ、ご飯に添える。
- ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。
また、以下のサラダを紹介しました。
とろとろ土佐酢サラダ
おくら | 100g |
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モロヘイヤ | 100g |
なめこ | 150g |
スプラウト | 適量 |
◇土佐酢 | |
しょうゆ | 50ml |
みりん | 50ml |
酢 | 50ml |
水 | 50ml |
かつお節 | 10g |
- かつお節に熱湯をかけ出汁をとる。みりんはさっと煮切って、しょうゆ、酢と一緒にする。
- 野菜はそれぞれゆで、おくらは小口切り、モロヘイヤも細かく刻む。スプラウトもざく切り、なめこはサッと熱湯に通し、器に盛る。
- 食べるときに、全体を混ぜ合わせ、土佐酢をかける。
- ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。
スプラウトに含まれるスルフォラファンは、体の抗酸化作用を高めることが知られています。ちなみに、スプラウトとはえんどう豆やかいわれ、ブロッコリーなど、発芽直後の野菜の新芽のことを指します。さらに、副食としておすすめしたいのが肉。その中でも鶏肉、特にささみが免疫を強くします。ただし外国産の鶏肉には女性ホルモンの使用が疑われるケースがあるので、できれば国内産を用いましょう。魚ではアントシアニンを多く含む鮭や鯛がおすすめです。
これらを3か月食べていただいたところ、満足いく免疫状態になり、再発もなくホルモン療法も終了となりました。術後5年経過されましたが再発もなく元気で過ごされています。
- 文献
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- 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.109-110.
(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。