漢方を活かす食養生 No.4 長年の便秘は食生活から
ここでは、食養生を実践するためのレシピや、食養生と漢方の関係について、水嶋クリニック院長で東洋医学研究所所長の水嶋丈雄先生が解説します。
今回は「常習性便秘」です。特に女性に多い機能性の常習性便秘は、安易な刺激性下剤の連用が問題となっていますし、逆に、下剤による腹痛など、薬物コントロールが難しい方が多くいらっしゃいます。このような場合、食生活の改善を併せて行うことが効果的です。
32歳女性が、常習性便秘に悩んで来院されました。20代の頃より便秘で、3日に1回コロコロの便が出て、ひどい時は1週間出ないこともあるといいます。近くのクリニックで血液検査などを行いましたが、異常はないと言われ、センナや大黄などの便秘薬を処方されるも、すっきりせず、むしろ腹痛が出るため、麻子仁丸(ましにんがん)を処方しました。
さらに食事指導として、不溶性食物繊維を中心に苦味のものを食べるように指導をしました。苦味の食品は、体内の余分なものを排泄する効果があるため、便通に効果があるといわれています。
苦味で寒性・涼性の食材は、お茶、コーヒー、ビール、たけのこ、ごぼう、にがうり、高菜、苦菜などがあげられます。苦味で平性にはうど、菊花、銀杏や春菊があり、苦味で温性にはよもぎ、ふき、タラの芽があります。たけのこやごぼうは甘味と苦味の成分を持ち、不溶性食物繊維がより多く含まれるため、便秘には最適の食品です。さらに食事の基本である甘味の食品からは、不溶性食物繊維の多いセルロースを多く含む大豆、ごぼう、小麦、さらにリグニンを多く含む小麦のふすまなどを勧めました。玄米、かぼちゃ、たけのこ、さつまいも、キャベツ、玉ねぎ、チシャ(レタス)、ほうれん草なども不溶性食物繊維が多いグループです。
食事には玄米・ふすまパンを主として食べていただき、さらに副食として以下のような食事を紹介しました。
寒天サラダ(ねぎ味噌だれ)
糸寒天 | 10g |
---|---|
わかめ | 5g |
クレソン | 10本 |
鶏もも肉 | 250g |
味噌 | 大さじ2 |
◇ねぎ味噌だれ | |
ねぎみじん切り | 大さじ2 |
味噌 | 大さじ2 |
みりん | 大さじ2 |
- 鶏もも肉は一口大に切り、味噌を全体にもみ込むようになじませ、半日おく。
- オーブンに網をのせ、その上に鶏肉をのせ、180度で12分焼く。
- 水にもどした寒天とわかめの水を切って、クレソンと一緒に鶏もも肉を加える。全体にねぎ味噌だれをかける。
- ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。
ひじきと大豆の炒めもの
乾燥大豆 | 100g |
---|---|
ひじき | 20g |
みりん | 大さじ3 |
しょうゆ | 大さじ2 |
サラダ油 | 小さじ2 |
- 大豆は洗ってたっぷりの水に一晩漬け、そのままの水で火にかけやわらかくなるまでゆでる。
- ひじきも水に戻しておく。
- 鍋に油をいれ、水分をきったひじきを炒め、大豆を加える。
- みりん、しょうゆを加え煮汁がなくなるまで煮る。
- ※詳しい作り方は文献1)に記載されています。
以上のような食事を指導しました。麻子仁丸で快便になっていきましたが、さらに 1週間後くらいから麻子仁丸を減量しても便通がつくようになり、腹痛もなくなりました。1か月後には麻子仁丸は1日1回の内服で快便が得られるようになっています。
- 文献
-
- 水嶋丈雄ほか. 食べて元気になる 漢方ごはん. 信濃毎日新聞社, 2008, p.62-63.
(本記事は医療関係者向けサイト漢方スクエアに掲載された記事を元に、一般読者向けに再編集しております)
医療法人 水嶋クリニック 院長/NPO法人 東洋医学研究所
1981年大阪医大卒。1978年より麻酔科兵頭教授に師事、鍼灸治療を学ぶ。1998年長野県佐久市内に水嶋クリニック・東洋医学研究所開業。2010年WHO伝統医学部門委員、日本東洋医学会評議員、2012年日本プライマリケア学会認定医、2014年厚労省保険部会外部諮問委員。著書に『花粉症・アレルギーを自分で治す70の知恵』(主婦の友社)、『鍼灸医療への科学的アプローチ』(三和書籍)など多数。