間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の治療に当帰四逆加呉茱萸生姜湯
膀胱痛症候群は、間質性膀胱炎と呼ばれる病気で、患者さんの9割が女性というのが特徴です。膀胱に原因不明の炎症がおこり、それによって尿が近くなったり、膀胱や尿道に違和感や痛みなどが起こったりします。通常の膀胱炎と違い、細菌が原因でないため、尿検査で異常はみられません。
この間質性膀胱炎・膀胱痛症候群に当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)が有効であると、女性医療クリニックLUNAネクストステージの関口由紀先生らが第70回日本東洋医学会学術大会で発表しました。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は当帰(とうき)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、木通(もくつう)、細辛(さいしん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、呉茱萸(ごしゅゆ)、生姜(しょうきょう)の9種類の生薬で構成されています。手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなりやすい人での、しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛の治療に使用されます。
昭和初期の漢方薬復興に尽力し、現在の北里大学東洋医学総合研究所の前身である、北里研究所附属東洋医学総合研究所の初代所長にも就任した大塚敬説医師は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が適する症状を持つ患者さんについて、(1)手足の冷え、(2)慢性の下腹部痛、(3)病気による痛みが現代医学では不明、(4)肝経の変動症状、特に泌尿生殖器の障害、開腹手術の既往が多い、としています。
7割弱の患者さんで、痛みが改善
関口先生は、こうした特徴が間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の症状と一致するところが多いことから、自院で当帰四逆加呉茱萸生姜湯を投与された、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さん64人について、有効性や安全性を検討しました。
ちなみに当帰四逆加呉茱萸生姜湯以外の併用薬は、抗うつ薬ではトリプタノールが34%、サインバルタが26%、疼痛治療薬ではリリカが20%、ノイロトロピンが8%、カロナールが4%、漢方薬の猪苓湯(ちょれいとう)が8%でした。
有効性については、痛みがどの程度かを視覚的に数値化する、VAS(Visual Analogue Scale)で評価しました。関口先生らはこのVASで30%以上痛みが改善した患者さんを「効果あり」と判定しました。その結果、「効果あり」は68%(44人)で、その他は「効果なしで服用中止」が18%(11人)、「副作用で服用中止」が14%(9人)でした。副作用については7人で胃腸障害、2人で湿疹が認められました。
このことから関口先生は、「冷えによって痛みが悪化する膀胱痛症候群に対して、当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、有効な漢方薬であると考えられる」と結論付けています。(村上和巳)