ビッグデータ分析で分かった漢方薬の実力(後)妊娠中のつわりに対する漢方薬の効果
第35回和漢医薬学会学術大会で、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻臨床疫学・経済学教授の康永秀雄先生が妊娠中のつわりに対する漢方薬使用が、西洋薬と同等以上の臨床効果があることを発表しました。
妊婦の約50~80%が経験するつわり。妊娠16週までに自然に軽快することがほとんどですが、約0.3~2%の妊婦で重症化やつわりが16週以降も引き続いてしまうことがあります。基本的に薬を使うことは少ないですが、重症の場合は西洋薬でメトクロプラミド、ビタミンB6、ドンペリドンなど、漢方薬でも小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)、二陳湯(にちんとう)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、人参湯(にんじんとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、五苓散(ごれいさん)などが用いられることがあります。
康永先生は株式会社日本医療データセンター(JMDC)のレセプトデータなどを用いて、2005年2月~2016年2月までに出生した新生児とその母親での先天奇形、低体重出生児、早産、母親の予定外入院の割合を、妊娠中のつわりに関する薬剤服用がなかった群(つわりなし群)、つわりで西洋薬を服用した群(西洋薬群)、つわりで漢方薬を服用した群(漢方薬群)で比較しました。
先天奇形はつわりなし群が4.1%、西洋薬群が4.8%、漢方薬群が4.5%で統計学的に有意差はありませんでした。また低体重出生児はつわりなし群が0.2%、西洋薬群が0.4%、漢方薬群が0.4%、早産はつわりなし群が3.2%、西洋薬群が3.3%、漢方薬群が3.6%でやはり統計学的な有意差は認めませんでした。
一方、母親の予定外入院については、西洋薬に比べて漢方薬での起こりやすさを康永先生が統計学的に解析したところ、漢方薬群の方が西洋薬群に比べて有意に起こりにくいという、漢方薬の使用に関してむしろポジティブな結果が得られたことを紹介しました。(村上和巳)
ビッグデータ分析で分かった漢方薬の実力
- ビッグデータ分析で分かった漢方薬の実力(前)
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