口内炎、歯周病、口臭治療で使われる漢方薬
口内炎は、一般的に感染が原因であれば、うがい薬や抗菌剤などの処方、入歯や義歯の接触などが原因の場合は、物理的刺激の除去やステロイドの外用剤や噴霧剤での対症療法。栄養不足が原因と推定される場合は、ビタミンやミネラルの処方あるいは基礎疾患や合併症を治療で対処します。
口内炎によく処方されている漢方薬は、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、茵ちん蒿湯(いんちんこうとう)、黄連湯(おうれんとう)、白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)などがあげられます。よく使われる漢方薬に半夏瀉心湯がありますが、とりわけみぞおちのつかえがあるときや、食欲不振、軟便といった症状がある口内炎に適しています。一方、便秘や下痢気味で口内炎がある場合は茵ちん蒿湯を使います。また、抗がん剤による化学療法後の口内炎では、半夏瀉心湯がよく使われます。
歯周病はほとんどが口腔内のグラム陰性菌の感染が原因で、治療の基本はプラークコントロールですが、そのうえで漢方薬が使われることもあります。日本東洋歯学会が47施設に行ったアンケート調査で、歯周病に処方している漢方薬を尋ねたところ、1位が排膿散及湯(はいのうさんきゅうとう)、2位が黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、3位が補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、4位が桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、5位が八味地黄丸(はちみじおうがん)でした。
まず炎症型での基本的な漢方薬は排膿散及湯、免疫型では体力低下の場合に補中益気湯、あるいは黄連解毒湯が使われます。
口臭については、日本口臭学会のガイドラインでは、生理的口臭と病的口臭に分けています。生理的口臭はいわゆる加齢性口臭、妊娠時口臭、思春期口臭、更年期口臭、起床時口臭です。病的口臭は虫歯、歯周病、悪性腫瘍、糖尿病のアセトン臭、肝疾患のアミン臭、腎疾患のアンモニア臭などです。病的口臭は基礎疾患の治療で改善します。生理的口臭は、唾液が働かず、口内の細菌数が増加するために起こることがほとんどです。唾液の分泌機能は自律神経が担っているため、加齢でこの機能が低下することで口臭が発生します。また、自律神経に影響を与える緊張、ストレスが多い人も同様です。この状況に対応する漢方薬は、抗炎症・抗菌などの作用を有する漢方薬ではなく、気持ちを落ち着かせたり、イライラを取ったりする補中益気湯や加味逍遙散(かみしょうようさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)がよく使われます。
(2017年6月開催 第68回日本東洋医学会学術総会「漢方入門講座 口腔領域への漢方治療 ―口内炎・歯周病・口臭症―(大阪歯科大学 細菌学講座 王宝禮先生)」をもとにQLife漢方編集部が執筆)