漢方治療が有用な消化器疾患は
消化器疾患の中でも、機能性胃腸症(吐き気、おう吐、げっぷ、食後のもたれ感、早期膨満感)、感染性胃腸炎でも特にウイルス性のもの、痔疾、便秘などは漢方薬の得意分野です。
体力が中等度あるいはそれ以上の方で、胸やけ、げっぷ、吐気などの上部消化管症状や腹鳴、下痢などの下部消化管症状に対しては、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)がよく使われます。また、激しい腹部膨満感、吐気、げっぷを訴え、げっぷをするとすっきりするような上部消化管症状の患者には、茯苓飲(ぶくりょういん)がよく使われます。なお、半夏瀉心湯は虚弱体質の人に使うと下痢を起こしてしまうことがあるので注意が必要です。
一方、体力が中等度以下の虚弱体質の患者さんには、六君子湯(りっくんしとう)、人参湯(にんじんとう)、桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)がよくつかわれます。六君子湯が胃もたれ、食欲不振が多く、その他に胸やけ、吐気、げっぷ、腹痛、下痢などにも使われます。人参湯は心窩部痛、腹痛、下痢または便秘の方に使われます。冷えや冷たい飲み物を飲むことで腹痛や下痢を発症する方に人参湯がよく使われます。桂枝加芍薬湯は、腹痛、腹鳴、下痢、しぶり腹、残便感、下痢と便秘を繰り返す患者さん、小建中湯では腹痛、下痢、食欲不振、下部消化管症状だけでなく様々な症状が出ている患者さんによく使われます。そのほか、感染性胃腸炎では五苓散(ごれいさん)や黄ごん湯(おうごんとう)がよく使われます。
(2017年6月開催 第68回日本東洋医学会学術総会「漢方入門講座 漢方治療が有用な消化器疾患(竹内医院 竹内正先生)」をもとにQLife漢方編集部が執筆)