診療・治療ガイドラインに掲載された漢方薬(1)認知症・心身症
認知症-抑肝散
厚生労働省によると、65歳以上で認知症の患者さんは2012年時点で約462万人。予備軍(軽度認知症)の約400万人と合わせると、「認知症800万人時代」になったといえます。日本神経学会が2010年に発行した「認知症疾患治療ガイドライン 2010」(医学書院)では、抑肝散(よくかんさん)が掲載されています。
レビー小体型認知症の行動・心理症状(BPSD)に対し、同ガイドラインでは「抑肝散の有効性が示されており、その使用を考慮してもよい」とし、「科学的根拠がないが、行うよう勧められる」としています。
心身症-六君子湯、桂枝茯苓丸、加味逍遙散、当帰芍薬散
心身症とは、その身体症状の出現のきっかけが、心理的なストレスによるもので現れている身体疾患の総称です。心理的な要因が、身体疾患発症のきっかけとなるだけでなく、身体疾患の経過にも関わっている場合もあります。代表的なものには、ストレスなどで生じている胃潰瘍や喘息、高血圧などです。日本心身医学会が2006年に発行した「心身症診断・治療ガイドライン2006」(協和企画)では、六君子湯(りっくんしとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が掲載されています。
機能性胃腸症(functional dyspepsia;FD)に対し、同ガイドラインでは「漢方薬は併存する身体症状や精神症状も含めた処方が可能なので、FDのようにさまざまな症状を並存する患者では、訴えを受容しながら使用しやすい薬物といえる。」とし、六君子湯の使用について、「行うことを推奨」としています。
また、更年期障害に対し、同ガイドラインでは「漢方の中で桂枝茯苓丸、加味逍遙散、当帰芍薬散の3つは女性3大漢方と呼ばれており、この3剤で更年期症状のかなりの部分をカバーできる。女性疾患の証が類似しているからと考えられる」とし、「行うことを推奨」としています。
診療・治療ガイドラインに掲載された漢方薬
- 認知症・心身症
- 喘息・咳嗽(がいそう)
- 全身性強皮症
- 前立腺肥大症・男性下部尿路症状