茯苓の国内生産に大きな一歩 北海道・石狩市に屋内栽培施設が完成
国内の生薬使用量第3位の茯苓
さまざまな漢方薬の原料生薬・茯苓(ぶくりょう)
漢方薬の原料となる生薬は、現在はそのほとんどが中国からの輸入です。しかし、一大産地である中国で、経済成長を背景に生薬の需要が拡大。輸入価格が高騰しています。そうしたことを背景に、近年、生薬の国内栽培の動きが広がっています。その一つが、北海道石狩市に本拠をおく、生振(おやふる)ファームとてみるファームがすすめる「茯苓(ぶくりょう)栽培国産化プロジェクト」です。
2017年1月、同プロジェクトは、石狩市に国内生産施設をオープン。その開所式が開かれました。
茯苓はサルノコシカケ科のキノコの一種で、その菌糸が固まってできた菌核とよばれるもの。八味地黄丸(はちみじおうがん)や五苓散(ごれいさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)など、数多くの漢方薬の原料生薬であり、国内の生薬使用量では第3位にランクインするほどなじみの深い生薬です。アカマツやクロマツの根に寄生してできる茯苓は、かつては国内でも多く栽培されていましたが、現在ではほとんど生産されていません。
今回のプロジェクトでは、その茯苓の屋内栽培にチャレンジしています。石狩市郊外に広さ約900m2の栽培ハウスを建築。一定の温度に管理された屋内では、最大約28,000個の菌床を一度に栽培することが可能です。同プロジェクトでは、菌床の製造から栽培、加工に至るまでをワンストップで行っています。
このプロジェクトは、石狩市から「石狩市まち・ひと・しごと創成総合戦略」に採択されているほか、ツムラが技術協力ならびに情報提供、近隣の農業者が栽培協力を行うなど、官民だけでなく、近隣住民も含めた厚い連携体制が敷かれています。開所式には石狩市長のほか、北海道副知事、衆参国会議員も参加するなど、その期待の大きさがうかがえるこのプロジェクト。大量生産・安定供給はまだまだ先の話ですが、その他の生薬の国内生産へのチャレンジに良い影響を与えれば、国内産生薬のみの漢方薬の誕生も、そう遠い日ではないのかもしれません。
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