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【インタビュー】漢方薬を通して、薬局がご縁のある患者さんの駆け込み寺になれば~日本在宅薬学会 狭間紀代先生

公開日:2016.09.01
カテゴリー:漢方ニュース

 薬局で漢方の相談をする方も多いと思いますが、実は漢方薬に「苦手意識」を持つ薬剤師も少なくありません。そうした苦手意識を減らすとともに、「漢方について気軽に相談できる薬剤師」の育成を行っているのが日本在宅薬学会の狭間紀代先生です。

 同学会では2014年から「漢方薬認定講師育成セミナー」を開催。在宅業務においての各症状に関し、医師への的確な漢方処方提案可能な力を持てるようになること、そして、店頭において患者さん、お客さんに自信を持って漢方薬を推奨出来るようになることを目的に、日々研鑽を積んでいます。1976年に漢方相談を主に行うハザマ薬局を開設してから40年。「今も新しい発見の毎日」と語る狭間先生に、薬局で漢方を相談するコツについて伺いました。

漢方は「かたくなに守る」ものではなく、「時代に合わせて変化する」もの

 漢方というと、伝統芸能のように昔の考え方を守るというイメージがありますが、実際は全く逆です。例えば、夏は暑く、冬は寒いというような季節の変化を感じ取れた時代の人体の機能と、今のような年中24度前後の室温で過ごしている人の体の機能は異なります。すなわち、その人に合った漢方薬の組み合わせも変わります。

 例えば、「風邪」1つとっても、くしゃみや悪寒の有無や鼻水がサラサラしてるか粘り気があるか、ノドの痛みや熱、倦怠感、咳など、多様な症状があります。100人いれば100通りの“その人に合う漢方薬”があるだけでなく、それぞれ1人ひとりの患者さんでも症状や年齢、体質の違いで数十通りの“その人に合う漢方薬”がありますね。

「患者さん」のことを知れば知るほど、「その人に合う漢方」が見えてくる

 そのためにも、相談に来られた患者さんのお話をじっくり聞くことが重要です。どんな症状に困っているか、それはいつからか。便通や排尿の回数はどうか、食事量はどうか、子どもの頃はどうだったかなど、患者さんの“今”の様子だけでなく、“人生”も聞き取れると、“その人に合う漢方薬”を提案できるようになりますね。

 そのために私は漢方相談を受ける際に漢方相談カルテというものを使っています。体重や血圧などの基本的なデータのほかに、体質や便通、疲れや皮膚の状態など全身の症状を詳しく伺います。初めての方などは「何でこんなにたくさん聞かれなきゃいけないの」と感じる方もいらっしゃいますが、情報はあればあるだけ、“その人に合う漢方薬”の発見に近づきます。みなさんも漢方を相談される際は、「今一番困っていること」はもちろんですが、二番目、三番目に困っていることはもちろん、困るほどではないがちょっと気になるレベルのことでもいいので、薬剤師さんに伝えていただくのが良いでしょう。

漢方だけでなく、「お薬の専門家」としてもっと薬剤師や薬局を活用してほしい

 内科や外科、心療内科など、それぞれ専門科目がある多くの医療機関とは異なり、漢方薬も西洋薬も、そして風邪のお薬も皮膚のお薬も全て取り扱う薬局は、いわばオールラウンドプレーヤーです。漢方だけでなく、西洋薬や市販薬なども含めた「お薬の専門家」として、もっともっと薬局や薬剤師を活用してほしいですね。

 今、「漢方薬認定講師育成セミナー」は第三期ですが、これまでに22人のインストラクターが誕生しました。今後は、このインストラクターを増やすとともに、彼らインストラクターがそれぞれ地元の薬剤師の先生に漢方の魅力を伝えていただくことで、より多くの患者さんが気軽に漢方を相談できる環境を創り上げていきたいですね。

狭間紀代(はざま・きよ)先生
一般社団法人日本在宅薬学会理事、ファルメディコ株式会社代表取締役会長。

昭和40年京都薬科大学卒業。昭和51年12月ハザマ薬局開局。
現在も店頭で健康相談を受けるほか、漢方薬認定講師育成セミナーなどを開催して、後進の育成に当たっている。

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