【後編】漢方の知恵でポジティブ・エイジング~第67回日本東洋医学会学術集会 市民公開講座から
「気」「血(けつ)」「水(すい)」を知れば、未病で気づくことができる!
よく、「突然病気になる」と言いますが、そんなことはありません。何らかのサインが出ているのに、それを受け止める受容体が気づいていないのが大半です。では、そのサインは何で知れば良いのでしょうか。漢方では「気」「血(けつ)」「水(すい)」の考え方があります。「気」は生命活動を営むエネルギーです。また、気持ちや気分といった言葉にも使われているように、こころの状態も含まれます。「血」は血液と近い考え、「水」は汗やリンパ液などの体液として考えてください。この「気血水」が滞りない状態を漢方では「健康」と考えます。逆に、過不足があったり、巡りが悪くなったりすると何らかの不調で症状が出てくると漢方では考えます。
「気虚」消化の良いものを
気虚は気が不足している状態のこと。症状としては元気が無い、つかれやすい、気力が無いなどがあります。「気虚」の時は大抵、胃腸が弱っています。消化の良いものを食べたり、山芋やシイタケなど「気」を補給する食物を摂り入れたりするのが望ましいとされています。加えて、休養を十分にとり、激しい運動を避けること。こうした生活の工夫をしても、好転しないときに初めて漢方薬が登場します。補中益気湯や六君子湯などが使われます。逆に漢方薬をのんでも、食生活や生活リズムが崩れていては効果も表れにくくなります。
「気鬱」シソやかんきつ類などを
気鬱は気はあるのだけど、上手く流れていない状態を指します。症状では、不安感の強さや抑うつ感のほか、気がのどに停滞していればのどが詰まった感じに、お腹に停滞していればお腹が張った感じになります。こうした時に有効なのが、シソやかんきつ類といった、香りの良い食べ物や、ハーブティーなどです。また、意識して気分のON-OFFを切り替えてみる、自分に好きな事やりたい事に没頭してみるのも効果的です。漢方薬では蘇葉や陳皮が入っているものがよく処方されます。
「気逆」シナモンやアロエが効果的
気が上半身の方に上がっている状態を気逆といいます。この症状の特徴は「急に」頭が痛くなったり、顔が赤くなったり、お腹が痛くなったりすること。上部に上がった気を下げるにはシナモンやアロエが効果的です。また、下腹部にある丹田を意識して深呼吸をするのも良いでしょう。漢方薬ではシナモンである桂枝が入っているものがよく処方されます。
「血虚」鉄分やコラーゲン補給を
血虚は貧血のような状態を指します。その他には乾燥状態や爪がもろくなったりするなど。そのような時には鉄分やコラーゲンを多く含む食べ物に加え、睡眠をとることも血を補給する重要な要素です。
「瘀血」ニラやタマネギのほか、黒い食べ物を
瘀血(おけつ)は血の巡りが滞っている状態です。アザや目のクマ、肩こり、重い生理痛などがその症状です。血の巡りをよくするには、ニラやタマネギ、パセリなどに加えて、黒豆などの黒い食べ物が効果的です。また、運動量が少ないことも瘀血の要因になります。エレベーターではなく階段で、など意識的に動きましょう。
「水滞」豆腐や夏野菜で「水」の補給を
水滞は「水毒」とも呼ばれていますが、主に水の分布異常でむくみなどが代表的な症状です。「水滞」の時には胃腸に優しいメニューのほか、豆腐や春雨、夏野菜などの水分の多い食材が効果的です。自分で「水」を調整するもっとも良い方法は汗をかくこと。半身浴や運動などで汗をかけばむくみは解消します。
「食事」「運動」「睡眠」「感情」の4つを養生に気をつかうこと
「気血水」で最も大切なのは「血」や「水」といった、物質を動かすエネルギーである「気」です。「気」は免疫機能と関わります。気を補うことは、免疫能力を高めることにもつながります。気を補うのは食事と睡眠です。そして、気を働かせるのは運動です。さらに、感情のコントロールは気の働きを助けます。「食事」「運動」「睡眠」「感情」の4つを養生することが重要です。このうち「食事」は特に大きく関与できる要素です。「気血水」で最も大事なのが「気」で、「気」を補う養生で最も大切なのは「食事」であることをしっかり覚えておいてください。
第67回日本東洋医学会学術集会 市民公開講座から