高齢者の身体合併症 漢方ではどう治療する?(2)「吐き気、嘔吐、食欲不振、体重減少 」「こむらがえり」
さまざまな疾病や愁訴を合併する高齢者が気をつけたい「身体合併症」について、漢方ができることを解説します。
吐き気、嘔吐、食欲不振、体重減少
高齢者において、吐き気や嘔吐、全身の倦怠感や食欲不振などの症状は、食事摂取量の低下による低栄養状態によって全身状態が悪くなることがあります。からだの回復に不可欠な免疫能も低下させる悪循環につながりかねません。高齢化による消化器機能の低下により機能性胃腸症や胃酸の逆流により胃食道逆流症などがあります。
西洋医学では?
西洋薬では、胃粘膜保護薬、胃消化管運動改善薬、胃酸分泌抑制薬などの薬が使用され、胸焼け、げっぷ、嘔気・嘔吐などに使用されます。
漢方では?
主に、六君子湯(りっくんしとう)、茯苓飲(ぶくりょういん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)が使われます。六君子湯は、胃粘膜保護作用、消化管運動改善作用などに加え、食欲亢進作用を示す消化管ホルモンであるグレリン産生を増強する作用を有し、食事摂取量および体重増加を促すことが知られています。食欲不振を改善する唯一薬剤と考えられています。げっぷや吐き気が強い場合は茯苓飲が、全身倦怠感が強い場合は補中益気湯が使用されます。
こむらがえり
こむらがえりとは、とつぜん足のふくらはぎの筋肉がけいれんして硬くなり、強い痛みを伴う状態のことをいいます。俗に「足がつる」とも呼ばれています。筋自身、あるいは筋を収縮させる運動神経が、何らかの原因で興奮して筋肉を持続的に収縮・痙攣させ痛みを伴っている状態です。
特に高齢者で就寝中に起こりやすいことが知られていますし、屋内などでこむらがえりが起こると、転倒し骨折や大きな怪我の原因になる場合があります。
西洋医学では?
消炎・鎮痛作用のある塗布薬・貼付薬が使われます。無効な場合には、筋弛緩薬、抗痙攣薬などの薬が使用されます。
漢方では?
主に芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)が使われます。芍薬甘草湯は、急激に起こる筋収縮を抑制し筋けいれんを抑え、中枢神経に働いて鎮痛作用を有します。頓服薬として使用されることが多く、長期服用する場合は、「甘草(かんぞう)」という生薬が多く含まれており、脱力感やむくみ、血圧の上昇などの副作用が起こるおそれがあります。医師の指導をきちんと守って服用するようにしましょう。
高齢者の身体合併症 漢方ではどう治療する?
- 「便秘」「尿失禁・排尿障害」
- 「吐き気、嘔吐、食欲不振、体重減少 」「こむらがえり」
- 「不眠、睡眠障害」「疲労倦怠感、免疫力低下」「嚥下困難」