漢方のミカタ~漢方専門医が教える症状別 漢方コラム 第2回「片頭痛」
“漢方の味方”漢方専門医の芝大門いまづクリニックの今津先生に、症状別に漢方医学の“見方”や処方される漢方薬などを解説いただきます。
2回目はビリビリ、ジンジン・・・一度始まると、痛くて痛くて仕事も家事も手につかなくなる「片頭痛」です。
どんな症状?どんな病気?
片頭痛は、悪心・嘔吐を伴い、光や音に対して過敏になります。日常生活が妨げられる程度の痛みだったとしても、階段の昇降など日常的な動作により頭痛がひどくなれば、片頭痛と考えられます。片頭痛は女性に多く、比較的若い年齢層(10~40代)によく起こります。片頭痛には前ぶれを伴うタイプと前兆を伴わないタイプがあります。前兆としては、視野の中心付近から始まりキラキラ光る境界をもつ暗点や視野障害などが典型的ですが、半身の感覚障害や運動障害、言葉が出にくくなる状態などが認められることもあります。この前兆は一般に1時間以内に消え、その後頭痛が続いて起こります。この前兆より前に、食欲亢進、あくび、感覚過敏、むくみ、興奮、疲労感、空腹感などの気分の変調が1~2日間にわたってみられることもあります。
【西洋医学のミカタ】
軽い頭痛には消炎鎮痛薬が。ひどくなると抗うつ薬などが処方される場合も
片頭痛の治療には、頭痛時の急性期治療と予防的治療があります。急性期かつ頭痛の程度が軽い場合には、まず消炎鎮痛薬から試み、これが有効でない場合にトリプタン製剤のお薬が処方されるのが一般的です。片頭痛の発作がしばしばあり、急性期治療だけでは十分に治療ができない場合や、急性期の治療が薬の禁忌(使用を禁じられていること)や副作用のためにできない場合、また急性期治療の乱用がみられる場合などには、β遮断薬や、抗うつ薬、抗けいれん薬などが処方されます。
【漢方医学のミカタ】
「気」の巡りが悪い状態と考え、元に戻すお薬を
漢方医学では生命エネルギーを表す「気」の巡りが悪くなると、「気逆」という状態になり、片頭痛が起こると考えられています。だから、漢方薬はまずその「気」の流れを正しく戻すものが選ばれます。また、「冷え」や「ストレス」なども原因となるので、「気」とともに、それらの症状を抑える役割のある漢方薬が処方されます。代表的な漢方薬が呉茱萸湯(ごしゅゆとう)で、呉茱萸(ごしゅゆ)のほか全部で4つの生薬から成っています。呉茱萸(ごしゅゆ)には、上半身で生じる頭痛や肩こり、そして嘔吐をおさえる作用があります。
この症状にはこの漢方薬
- 呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
- 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
- 桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
- 五苓散(ごれいさん)
- 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
健康コラム 「私、漢方のミカタです」
~Vol.2 イロイロな片頭痛は対処もイロイロ~
頭痛を持っている方は意外と多くいらっしゃいます。中でも片頭痛は肩こりによるもの、気候の変化によるもの、月経などホルモンバランスによるものなど、さまざまな原因があります。さらに症状も人によって大きく異なり、軽い痛みから耐えられないような痛みまで、実際にはいろいろなものが混ざり合っていると言えます。それゆえに患者さんの中には、何か所も病院に行ったのにも、なかなか治らないという方もいらっしゃいます。
私が片頭痛の患者さんに漢方薬を処方する場合、筋肉の疲労によって起こるもの、季節の変わり目に起こるもの、月経などホルモンの変化によって起こるもの、大きく分けてこの3つそれぞれの特性に合ったお薬を処方します。
さまざまなタイプがある片頭痛ですが、どのタイプに関しても共通するのは、仕事の疲れや日常生活で受けるストレスなどを把握することが重要ということです。気候の変化やホルモンバランスの変化は1つのきっかけで、日ごろの疲れやストレスが原因の根底にあると言えるからです。例えば「明日は、天気が悪くなりそうだな」「そろそろ月経が来そうなタイミングだな」と気づいたら、症状が出る前に漢方薬を飲んで対応することができます。日ごろから体調管理に気を使い、プラスアルファとして漢方薬で対処する、というのはいかがでしょうか。
芝大門 いまづクリニック 院長
参考リンク:芝大門 いまづクリニック