よこはま健康セミナー『漢方に学ぶ』参加レポート
現代にも通じるメッセージ~日本に現存する最古の医学書「医心方」
第1部では、日本に現存する最古の医学書「医心方」について、先ごろ、同書を解読し、現代にその全貌を甦らせた古典医学研究家・槇佐知子先生の講演が行われました。平安時代に丹波康頼(たんばのやすより)が編纂した「医心方」は、病気の原因、治療法だけでなく、医師倫理や保健衛生など幅広いジャンルにわたって編纂された、いわば「医療の百科事典」です。
「丹波康頼は83歳で亡くなっていますが、これは、医療技術の進んだ現代でももちろん、当時としては大変な長寿といえます。彼が長生きできたのも、医心方に書かれているような、健康のひけつをしっかりと実践してきたからかもしれません」(槇先生)。
槇先生は「医心方」の解読にあたり、ただ文献を現代語訳するだけでなく、できるだけ実践してみたそうです。たとえば、ニキビの治療には、「医心方」では、数日卵を三倍酢に漬けたものを患部に塗る、となっており、実際にやってみたところ、肌の調子が良くなったそう。「そのほかにも、冷え性に悩んでいたのですが、医心方にあった、呼吸法を試してみたら、一晩で解消したんですよ」と槇先生。「机上」だけでなく「実践」も行い古文書を解読するそのパワーに聴衆の誰もが圧倒された1時間でした。
日本における漢方薬を使った治療の現状
後半の第2部ではベイサイドクリニック副院長の岡洋志先生に、日本における漢方薬治療についてお話いただきました。先生はまず、西洋医学と漢方医学の違いを説明。「心身一如」の治療体系で、からだ全体の治癒力を促進する漢方医学の特長を伝えたほか、1人の医師が漢方薬も西洋薬もともに処方できることから、西洋医学と組み合わせて最適な治療を行える日本の医療事情についてお話いただきました。
次に、お薬としての「煎じ薬」と「顆粒エキス剤」のそれぞれのメリットを紹介し、日本の漢方製薬技術の高さをお教えいただけました。続いて、慢性疲労や食欲不振など、漢方薬がその効果を発揮しやすい病気について、「どんな状態の人にはどんな漢方薬を処方した方がいいのか」を分かりやすく解説。聴衆のみなさんも熱心にメモをとっていました。また最後に「漢方薬はいつ飲めばいいの?」「副作用はあるの?」など、実際に先生のもとを訪れた患者さんからよく聞かれる質問について1つひとつ丁寧に説明いただきました。
「同じ病名でも、患者さんの状態によって、処方される漢方薬は異なります。『“なんとなく不調”のような現代医学では診断名がつかない症状』『充分な治療手段が無い』『西洋薬で副作用や過敏症などの症状が出た』『多くの病気や症状が同時にでている』といった方は漢方による治療が向いていると思います。ぜひお近くの病院・クリニックでご相談なさってください」と締めました。