<新型コロナウイルス後遺症治療と漢方薬 編集後記>患者の半数以上が仕事に影響も 長期化する新型コロナ後遺症について
国内の新型コロナウイルス感染症の新規陽性者は1週間平均で約42,000人(2022年3月23日現在)1)、感染者数は少しずつ減少してきてはいるものの、第7波の流行も懸念されており、まだまだ予断を許さない状況です。流行から2年以上が経ちますが、後遺症に悩む方の数は「増えている」と東京・渋谷で新型コロナウイルス感染症による後遺症(以下、新型コロナ後遺症)の診療を行っているヒラハタクリニック院長の平畑光一先生は話します。
記事では、新型コロナ後遺症に対して、実際に平畑先生が診療で処方している漢方薬などを紹介しました。
感染症の症状は軽くても後遺症は重い場合も
東京都が作成している『新型コロナウイルス感染症 後遺症リーフレット』によると、新型コロナ後遺症の原因は、自己抗体、ウイルスによる過剰な炎症(サイトカインストーム)、活動性のウイルスそのものによる障害、不十分な抗体による免疫応答などが考えられていますが、はっきりと分かっていません。後遺症は若い人でも発症する割合が高く、感染から1年経過した後でも症状が見られる場合があるといいます。
後遺症に悩んでいた30代女性の例を紹介したいと思います。
感染がわかったのは1年半ほど前のこと。感染症の症状自体は軽く、すぐに熱も下がったことで安心していましたが、回復からひと月ほど経った後から髪の毛が抜け始め、倦怠感も強くなっていったといいます。この2つの症状は半年以上続きましたが、新型コロナ後遺症外来を受診、漢方薬を服用することで症状が少しずつ改善してきたそうです。
感染後に、後遺症の相談をするまでの期間として多いのは、おおよそ1か月〜半年ほどという調査結果があります。症状も、複数ある場合が少なくないため、学業や仕事への影響も強く、平畑先生の調査では後遺症(疑いを含む)のある患者さん992人のうち、65%の人が「時短や在宅での仕事」「休みながら就業」「解雇・退職」など、労働に対する影響が出ていたことがわかっています。
無理をせず、辛いと思ったときは受診を
現在、新型コロナウイルス感染症発症者の隔離期間は、症状がある場合、発症日の翌日から10日間、かつ症状軽快後3日間と定められています。そのため、感染した場合は2週間近く仕事に穴を開けることになってしまいます。休んだ分を巻き返さなくてはと、体力が戻る前から無理をしてしまう人もいるのではないでしょうか。しかし、記事でも紹介したように、倦怠感が筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(Myalgic Encephalomyelitis:ME/ Chronic Fatigue Syndrome:CFS)に移行する可能性もあり、日常生活に支障をきたすほどの極端な体力の落ち込みが出るケースもあります。
「なかなか調子が戻ってこないな」「辛いな」と感じるときには、「コロナはもう治ったのだから」といって無理な活動をすることは禁物です。現在東京都には「コロナ後遺症相談窓口」が設けられています。また、少しずつではありますが、漢方薬でコロナ後遺症を治療できる医療機関も増えてきています。
平畑先生も、お忙しい診察の合間を縫って、twitter(@k_hirahata)やYoutubeなどで、患者さんから寄せられたコロナ後遺症に関する質問に答えるだけでなく、病態や治療についての医療者への情報提供も積極的にされています。
新型コロナウイルス感染症は、誰でもかかる可能性がある病気で、後遺症も他人事ではありません。もしそうなったときに「漢方薬で治せる」ということを知っておいていただきたいと思います。(大場真代)
- 参考
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- 厚生労働省│国内の発生状況など<2022年3月25日閲覧>