【十全大補湯】進行性膵がん患者における免疫学的パラメーターの変化/論文の概要
公開日:2014.12.10
カテゴリー:特集・漢方の実力
論文の概要
- <論文タイトル>
進行性膵がん患者における漢方薬・十全大補湯の服用による免疫学的パラメーターの変化 - Changes of immunological parameters with administration of Japanese Kampo medicine(Juzen-Taihoto/TJ-48) in patients with advanced pancreatic cancer(International Journal of Clinical Oncology February 2014, Volume 19, Issue 1, pp 81-86)
- 目的
- 進行性膵がん患者で、がんの進行や転移の進行に関係するとみられる免疫学的パラメーターの十全大補湯の投与による変化を検証する
- 試験デザイン
- 前向き2群間オープンラベル比較試験
- セッティング
- 徳島大学医学部消化器・移植外科部門
- 対象
- 国際対がん連合(UICC)による悪性腫瘍病期分類でステージIVA、あるいはIVBの進行性膵がん患者30例と健常人ボランティア30例。
- 介入
- 膵がん患者にがん治療を行う前に、十全大補湯の食前1回2.5gを1日3回、14日間投与。
- 主な評価項目
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膵がん患者で十全大補湯投与前後に末梢血を採取し、以下を免疫学的パラメータの変化を検討。
- 健常人と膵がん患者の制御性T細胞(Foxp3+CD4+CD25+Treg)レベル
- 膵がん患者での十全大補湯投与前後の制御性T細胞数の変化
- 膵がん患者での十全大補湯投与前後のCD4細胞/CD8細胞比の変化
- 膵がん患者での十全大補湯投与前後のCD57細胞数
また、ステージIIIの膵がん患者で十全大補湯服用群(10例)と非服用群(10例)で、その後、ゲムシタビン+5FU+シスプラチンによる化学療法(GFP療法)を行った場合の全生存率比較
- 結果
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健常人に比べ
- 対象膵がん患者では十全大補湯投与終了時にCD4/CD8比は有意に上昇した(p<0.01)。
- 対象膵がん患者では十全大補湯投与終了時に制御性T細胞数は有意に低下した(p<0.01)。
- 対象膵がん患者では十全大補湯投与終了時のCD57細胞数に有意な変化はなかった。
- 十全大補湯前投与のステージⅢ膵がん患者では、非投与患者に比べGFP療法施行サイクルが増加し、全生存率も延長傾向だったが有意差は認められなかった(P=0.24)。
- 十全大補湯による副作用は認められなかった。
- 結論
- 十全大補湯は進行性膵がん患者で抗腫瘍免疫を抑制する制御性T細胞数を減少させる。このことは膵がんでの様々な併用療法を行った際に良好な免疫賦活効果につながる可能性がある。