【大建中湯】腹腔鏡下大腸がん切除術後の外科的炎症反応に対する効果/論文の概要
公開日:2013.02.22
カテゴリー:特集・漢方の実力
論文の概要
- <論文タイトル>
腹腔鏡下大腸がん切除術後の外科的炎症反応に対する漢方薬・大建中湯の効果 - The effects of the Kampo medicine (Japanese herbal medicine) “Daikenchuto” on the surgical inflammatory response following laparoscopic colorectal resection.
Yoshikawa K,,et al. Surgery Today. 2012; 42: 646-651.
- 目的
- 腹腔鏡下・大腸がん切除術後の炎症に対する大建中湯の抗炎症効果を検証する
- 試験デザイン
- オープンラベル無作為化並行群間比較試験
- セッティング
- 徳島大学病院消化器外科
- 対象
- 2007年7月から2008年8月までに組織学的に結腸・直腸の腺がんと診断され、パフォーマンス・ステイタスが0~1の腹腔鏡下がん切除術を受けた30人。切除以前に手術、化学療法、放射線療法はいずれも受けていない。除外規定は患者登録前6ヶ月間に病状の不安定な貧血、心筋梗塞があった患者さん、コントロールされていない高血圧、糖尿病、重症の呼吸器疾患、腸漏出・腸閉塞があった患者。
- 介入
- 大建中湯を投与したD群(15人)とコントロール群のC群(15人)に振り分けた。D群では切除翌日から7日目まで大建中湯7.5mg/日を投与、C群では何も投与しなかった。両群とも切除翌日から飲水、5日目から飲食を開始した。術後の疼痛に対してはロキソプロフェンのみ使用可能。
- 主な評価項目
- 主要評価項目:切除前と切除後1、3、5、7日目に測定した体温、心拍数、白血球数、リンパ球数、C反応性蛋白産生量(CRP)、血中β-Dグルカン値、カンジタ指数
副次評価項目:切除後、最初の腸内ガス放出までの期間、入院期間、合併症の有無 - 結果
-
炎症マーカーであるCRP値は切除3日後にD群、C群ともに最高値となったが、C群8.3±1.1mg/dlに対し、D群4.6±0.46 で、大建中湯を投与した群で有意に低値だった(p<0.05)。また、切除後の体温は両群とも一旦上昇し、その後徐々に低下したが、切除3日後にD群36.2±0.4℃、C群36.9±0.6℃で、D群で有意に低かった(p<0.05)。さらに切除後最初の腸内ガス放出までの期間の中央値はD群1.8±0.5日、C群2.7±0.5日でD群が有意に短かった(p=0.02)。
- 結論
- 大建中湯は、腹腔鏡下大腸がん切除後の炎症反応を有意に抑制することが示唆された