漢方について相談できる病院検索 漢方について相談できる病院検索

アイさくらクリニック 木村昌幹院長

公開日:2015.06.24
カテゴリー:外来訪問

~漢方薬の新時代診療風景~
 漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
 近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
 漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。

尊敬する父や恩師の背中を追って精神科医へ

 私の父も医師でした。しかし、父から医師になるよう言われたことは一度もありませんでした。父は患者さんの立場を考える、尊敬できる精神科医でした。子どもの時はあまり意識していませんでしたが、今から思うと、私が精神科医になるにあたって少なからぬ影響があったと思います。
 また、日本心身医学会初代理事長の池見酉次郎先生の『心療内科』(中公新書)という本を読んで衝撃を受けたことも、医師を目指すきっかけとなりました。池見先生は九州大学心療内科の礎を作った先生です。高校3年生の時に池見先生に心療内科を学びたいと手紙を書きましたら、いち高校生の私にきちんと返事をくださり、とても感動しました。
 昔は精神科に入局するのは個性的な変わり者と見られる向きもありましたが、私の場合、大学時代に学んだ陰陽流空手理論が、東洋医学の精神交互作用、つまり心と体は一対だという考えにも通じるものがあったので、難解な精神科にスーッと入っていけたのだと思います。

早い段階で来られる病院づくりのために


写真提供:アイさくらクリニック

 当院の開設は2001年です。開業前の精神病院勤務歴は長かったのですが、そこで感じたことは、精神的に疲れ果てた後にやっと病院を受診する人が多いということでした。だから、もっと気軽に受診しやすい病院があれば救われる人もたくさんいるのではないかと思ったのです。
 精神病院では1950年代頃は精神衛生法などの国策で、患者さんを隔離する方針をとっていた時期があり、それによる偏見もあったと思います。しかし今は、一般の内科に行くような気軽さで受診してもらい、心の健康を確保する傾向にあります。そのため、開院するなら仕事をしている人が気軽に行けるような街中のビルクリニックがいいかなと思っていました。案外、人に見られると恥ずかしさや不安を感じる人がいらっしゃいますからね。入口が直接見えないビルクリニックだと、それも気にならないのではないでしょうか。
 ちなみに、私は一般内科やアレルギー疾患の治療にも対応しており、診療時間も仕事をしている人が受診しやすい設定にしています。

漢方薬は特に女性の疾患に必要不可欠

 漢方診療を取り入れるようになったのは、臨床場面で常に東洋医学的思想や精神交互作用の考えを意識していたからと、大学卒業後3年経って勤務した、岡山県の河田病院関連の先生とご縁があって直接教えを受けたからです。上海中医学園の教科書の日本語版を皆で輪読し、鍼灸の指導も受けることができました。それ以来、漢方診療を取り入れながら診療を続けています。
 診療は漢方薬と西洋薬の二本柱でやっていて、漢方のいいところを取り入れながら治療するというのが私の考えです。当院は女性の患者さんが多く、女性の診療には導入として漢方薬を使うことが多いです。当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸は頻繁に使いますし、補中益気湯もよく使います。PMS(月経前症候群)や、最近うつ病のひとつと理解されるようになったPMDD(月経前不快気分障害)に使うことも多いですし、パニック障害に使うこともあります。
 漢方薬は男性よりも女性のほうが好む傾向がありますね。「治療はまず漢方薬から入っていきましょう」と言うとスムーズに導入できるケースもあり、漢方薬だけで治ってしまう人もいます。ですから、当院ではPMSとPMDD、更年期障害に漢方治療は必要不可欠です。

生活全般に及ぶ指導で心の健康の回復を図る

 当院には心の病で来る人が多いですが、体も健康でないと心も健康にはなりません。ストレスを感じると動悸がする、動悸がすると不安が強くなる、そうなるとまた動悸を感じるという精神交互作用というものがあります。その対策として、患者さんには規則正しい生活と質のいい睡眠をとることを口を酸っぱくして指導しています。特に睡眠覚醒リズムで大事なのは、睡眠時間の長さよりも朝起きる時間帯。光も睡眠に影響しますから夜スマホを使うのは控えるようにとか、起きたら部屋を明るくして食事を摂りましょうといった具合に治療しています。
 また運動も大切です。精神薬を飲んで心が落ち着いても、体がついていかないと健康にはなれません。ですからこれらのことも大事にするように指導しています。

自分ができていないことは人にも伝えられない

 自分が健康でないと説得力がないし人にも伝えられないと考えているので、自分の健康管理は大事にしていて、私自身も運動するように心がけています。水泳が趣味なのですが、1年間で365キロメートル以上は毎年泳いでいますよ。これからも泳ぎ続けて、自分の目標としては70歳までやりたいですね。また、運動とメンタルヘルスの論文も関心があるので集めて勉強しています。

アイさくらクリニック

医院ホームページ:http://www.aisakura.com/

福岡市地下鉄「天神南駅」から徒歩1分。仕事帰りでも行きやすい場所にあり、広い待合室には読み物が充実している。
詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

内科、精神科、アレルギー科、心療内科

木村昌幹(きむら・まさみき)院長略歴
昭和56年 4月 川崎医科大学入学
昭和62年 3月 川崎医科大学卒業
昭和62年 5月 川崎医科大付属大学病院 ジュニアレジデント(心療科入局)
平成 1年 4月 岡山県 河田病院
平成 3年 4月 川崎医大学付属病院 シニアレジデンド
平成 4年 5月 医療法人 和光会 一本松病院
平成 8年 9月 医療法人 親和会 飯塚共立病院
平成10年 4月 医療法人 温故会 中村病院(副院長)
平成13年 3月 医療法人ウェルライフ アイさくらクリニック開院
■所属・資格他

精神保健指定医、日本精神神経学会専門医、日本心身医学専門医、日本医師会認定産業医、日本精神神経学会、日本心身医学会、日本外来精神医療学会、日本抗加齢学会

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeとしての意見・見解を示すものではありません。
記事内容・画像・リンク先に含まれる情報は、記事公開/更新時点のものです。掲載されている記事や画像等の無断転載を禁じます。

外部サイトへ移動します

リンク先のウェブサイトは株式会社QLifeが運営するものではないこと、医療関係者専用であることをご了承ください。