ともこレディースクリニック 佐藤智子院長
~漢方薬の新時代診療風景~
漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。
日本最初の女医の生涯を読んだことが医師を目指すきっかけに
高校の頃、同じ札幌医大出身の渡辺淳一の『花埋み』という小説を読んだことが医師を目指したきっかけです。もともと文系だったのですが、この小説は日本最初の女医である荻野吟子の生涯を題材としており、その生き方に感銘を受けたのが志すきっかけとなりました。その後、無事に大学へ入学し、4年目の春休みに自主的に産婦人科の実習に行きました。そこで病気を治療するということだけではなく、生命の誕生の瞬間を目の当たりにした時、産婦人科医になろうと決意しました。
ですが産婦人科は24時間いつでもスタンバイしていなくてはならず、食事やお風呂に入るのもほんのちょっとの隙間を縫ってしていましたね。そのおかげで食事を取るのも早くなりました(笑)。そんな自分の生活がないような日々を過ごしていましたが、それでも患者さんが感謝してくれることがとても励みになり続けてこられました。
気軽に受診できる場所を作りたいと開業に
写真提供:ともこレディースクリニック
開業を決意したのは今から10年前のことです。留萌市立病院を経てNTT札幌病院に勤務していましたが、どちらの病院でも女性ドクターを希望される人が多くいらっしゃいました。しかし私自身分娩や手術などの対応もありましたし、女性ドクターを希望される全ての方を診るわけにはいかない。しかしこうしたニーズに応えたいという気持ちと『何かの時にも気軽に受診できるクリニック』を作りたいと開業に至りました。
婦人科というと内診台に乗ったりと受診に関しても不安の多い科です。初めての婦人科デビューでもやさしく不安なく受診できるようなクリニックにすること。これが開業当時から今でも続くクリニックのポリシーです。
現在は、健診やPMS、更年期障害、骨粗鬆症など幅広い年齢層の患者さんにいらしていただいています。親子3代で受診される方もいらっしゃるんですよ。
女性の不定愁訴改善は漢方薬の得意分野
写真提供:ともこレディースクリニック
漢方薬と出会ったのは学生時代の実習の際、担当ドクターが漢方薬に詳しかったことで折に触れて使う機会を見てきたことです。病院勤務時代はがんの副作用軽減のために使うなど頻度は少なかったのですが、開業後からはよく使うようになりました。というのも女性特有の不定愁訴にどう対処するかという時、西洋薬よりも漢方薬のほうが対応できることが多いからというのが一番の理由です。婦人科を受診される患者さんの中には肩こりや冷え、めまい、頭痛、疲労感、イライラ、不眠などの不定愁訴を抱えている方が多くいらっしゃいます。その中にはたくさんの病院を回っていてたくさんのお薬を服用している場合も少なくありません。このような場合、漢方薬であれば一剤でカバーできるので、服用しているお薬を整理整頓することもできます。
最近では「漢方薬を使ってみたい」とご自身から希望される患者さんも増えましたし、症状が改善してきても飲み続けている人は多いですね。
患者さんのバックグラウンドを知ることで対処法が見えてくる
写真提供:ともこレディースクリニック
患者さんの訴えはなるべく受け止め、少しでも症状が和らぐようお薬を処方するだけでなく、仕事の内容や生活リズム、生活習慣について詳しく話を聴くようにしています。何故症状が起きているのか、患者さんの生活を知ることで対処方法が見えてくるからです。例えば女性に多い冷え症の方はほぼ運動不足であったりします。食事や運動、睡眠は全ての基本です。だから薬だけに頼ることなく「患者さんの努力も必要ですよ」と話をするようにしています。
漢方医学は奥が深く、一生勉強を続けていかなくてはいけないと感じます。患者さんにぴったり合う漢方薬が処方できれば症状も改善し、患者さんにも感謝していただるのはとても嬉しいことです。開業から今年で10年という節目ですが、もっとたくさんの患者さんを診たいですし、そのためにも知識を増やし自分自身も漢方薬を上手に使いながら健康維持に努めたいと思っています。
ともこレディースクリニック
医院ホームページ:http://www.tomoko-ladies.dr-clinic.jp
JR琴似駅直結、地下鉄琴似駅から徒歩10分。小さな悩みでも相談しやすい雰囲気。
詳しい道案内は、医院ホームページから。
(写真提供:ともこレディースクリニック)
診療科目
婦人科
佐藤智子(さとう・ともこ)院長略歴
同年 留萌市立病院産婦人科医長
1990年 NTT札幌病院産婦人科勤務
1992年 同産婦人科医長
2001年 同産婦人科部長、札幌医科大学産婦人科臨床助教授兼任
2004年 ともこレディースクリニック開院
■資格・所属学会他
日本産科婦人科学会認定専門医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医、日本臨床細胞学会認定細胞診専門医