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漢方薬服用で眠くなる? 安心して服用するために確認すべきこと

公開日:2025.02.06
カテゴリー:病気と漢方 監修:杵渕 彰先生(漢方医学研究所 青山杵渕クリニック 所長)

西洋医学で使われる西洋薬の中には、副作用として眠気を引き起こすものが存在します。東洋医学における漢方薬においても、眠気を引き起こす可能性のある処方が存在するのでしょうか。自動車の運転や仕事、学業などの場面において、眠気は大きな支障となる可能性があります。この記事では、眠気を引き起こす可能性が高いとされる漢方薬について、その特性と使用上の注意点について解説します。

漢方薬と眠気の関係

「かぜ薬を飲みたいけれど、眠くなると困るので、西洋薬ではなく漢方薬の方がよいのではないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。

かぜによく用いられる漢方薬には、葛根湯(かっこんとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などがありますが、これらには眠気を引き起こす成分は含まれていません。

また、漢方薬は長期間服用することが多いため、眠気を引き起こす漢方薬では支障が出ると考える方もいるかもしれません。しかし、漢方薬には西洋薬のような急激に眠くなる作用は基本的にはないと考えられています。

不眠症など、睡眠障害の方へ処方される「眠気を引き起こす漢方薬」も存在しますが、西洋薬(睡眠薬)のように脳を強制的に鎮静させたり筋肉を弛緩させたりする作用はありません。漢方薬は、睡眠の妨げとなるイライラや興奮、不安や緊張、心身の疲れなどを和らげることで、自然な眠りへと導く働きがあります。

漢方薬には即効性はありませんが、西洋薬(睡眠薬)のようにふらつきや転倒、せん妄や日中の眠気などの副作用のリスクが低いというメリットがあります。

眠気を引き起こす漢方薬とは

睡眠障害の方へ処方される漢方薬には、鎮静作用のある黄連(おうれん)や黄芩(おうごん)、精神を安定させる作用のある柴胡(さいこ)や竜骨(りゅうこつ)、牡蛎(ぼれい)、抗ストレス作用のある酸棗仁(さんそうにん)や半夏(はんげ)といった生薬が配合されています。

ここでは、睡眠障害に対してよく使われる漢方薬をいくつかご紹介します。

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

黄連解毒湯は鎮静作用のある生薬(黄連、黄芩)を含み、イライラや精神的な興奮のために眠れない人や、緊張状態が続いていて寝付けない人、寝付きにくいのに早朝に起きてしまうような人に処方されます。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

半夏厚朴湯は不眠に対する不安を抱え、ずっと睡眠のことを考えている、寝てもすぐ覚醒してしまう「中途覚醒」が多い人に対して不安感を和らげる目的で処方されます。

柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

不眠に対する不安があると、熟眠障害(ぐっすり眠れない)が起こりやすくなります。柴胡加竜骨牡蛎湯は神経質で比較的体力がある人に処方されます。

抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)

抑肝散加陳皮半夏はイライラ・興奮と、不眠への不安の両方が不眠の原因となっている人に処方されます。

酸棗仁湯(さんそうにんとう)

酸棗仁湯は心身ともに過労の状態で、寝つきが悪く、ぐっすり眠れない人に処方されます。

眠気を引き起こす漢方薬を服用する際の注意点

漢方薬には西洋薬のように急激に眠くなるような作用は基本的にありません。ただし、生薬の中には鎮静作用を持つものがあるため、人によっては眠気を感じる可能性があります。

初めての漢方薬を服用する際は、眠気が生じても支障がないタイミングで試すとよいでしょう。服用後に眠気を感じた場合は、自動車の運転など危険を伴う作業は控えましょう。

なお、眠気を引き起こす漢方薬を不眠症の治療として服用する場合は、規則正しい生活習慣と睡眠のための環境づくりも併せて行うことが大切です。漢方薬は睡眠の妨げとなる要因を軽減する効果がありますが、就寝前にカフェインを多く摂取したり、長時間の昼寝をしたりするなど、不眠を悪化させるような行動を続けていては、十分な効果が得られない可能性があります。

杵渕 彰(きねぶち あきら)先生
漢方医学研究所 青山杵渕クリニック 所長

岩手医科大学卒。東京都立松沢病院(都立広尾病院兼務)、東村山福祉園、柏木診療所、財団法人日本漢方医学研究所所属 日中友好会館クリニック所長などを経て、2001年4月に青山杵渕クリニック開設。日本精神神経学会専門医。日本東洋医学会専門医。日本医師会認定産業医。

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