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【連載】暑さを乗り切る!涼しく過ごす養生法│漢方医学の知恵で心と体が整う養生カレンダー

公開日:2023.07.14
カテゴリー:病気と漢方

冬の間に体にたまった「寒」を、「汗」とともに外に出す夏

東洋医学的には「汗」を出すことは、上昇した体熱を冷ますこと以外に、大切な意味があります。それは、「不要な“もの”を外に出す」こと。「不要なもの」とは身心(身体的、精神的)にとって不要なもの、という意味を持ちます。例えば、ジョギングをして汗をかいたとき、気分がスッキリし(心)、同時に、むくみも少し取れた(体)という経験はありませんか?目から「汗」を出して(涙を出す)、大声を上げて(声を外に出す)泣くと、悲しい気持ちが少し軽くなった経験はありませんか?
このように、身体についている各種の「穴」から“もの”を排出する行為には、身心にとって不要なものを外に出すという意味があります。東洋医学的には、冬に溜め込んでしまった「寒邪」を夏の暑さによって外に排出するという意味があり、暑さの中、温かい物を食べて、ふうふう言いながら汗を流すことは、来るべき次の冬への備えとして大切なことです。もちろん、限度を超えて体を熱しすぎてしまうことは避けましょう。自分自身の体と相談しながら実行することが大切です。

腸が温かいほうが消化力も高まる

腸を冷やすことは、年間を通して避けたいものです。消化に最適な体温を維持することが、腸には大切です。クーラーに当たって、足元から冷えて、腸が冷えた結果、夏でもお腹が痛くなることがあります。また、アイスを食べてお腹を冷やした結果、下痢をすることもあります。これらは、腸を冷やしたことによって起きた現象です。アスファルトに囲まれた都市部の現代家屋は、気密性が高く熱がこもりやすくなっていますから、冷房をかける必要があります。しかし、冷房によって冷えすぎると、汗は引っ込んでしまい、足元が冷えて、それが腸の冷えにつながります。その結果、夏バテを引き起こすこともありますので注意が必要です。

注意したい「気持ちが悪い汗」とは

汗をかくこと自体に抵抗がある方もいるかもしれません。もしそれが、「服が湿って気持ちが悪いから」「匂いが気になる」というような物理的なものであれば、速乾性の服を選ぶ、すぐに汗を流せるような環境を準備する、といった対処が考えられますが、季節に関係なく寝汗をかきやすく、少し暑いところに出るととめどなく汗が出てしまい気持ちが悪い、という場合は、体の調子が落ちている「気虚」のサインかもしれません。
この場合は、しっかり養生をして冷えをとり消化力を高め、体調を整えることが、余分な汗をかかない体にするために必要なこととなります。

冷たいものが欲しくなったときの対処法

暑い場所(屋外)から涼しい場所に移動してきたときやお風呂あがり、寝起きなど、鬱熱(うつねつ=発汗などの対応調節機能が低下することによって体温が上昇すること1)があるときは体を冷ましたくなり、つい、冷蔵庫のものを手に取ってしまいがちです。しかし、冷たい物を飲んでも、実は大して涼しくなりません。むしろ腸を冷やして胃腸の消化力を落としてしまいます。
鬱熱を除去するのに最適な飲み物は、「麦茶」です。麦茶は温かくして飲んでも、体の熱を冷ます、冷性の食品です。ですので、体を冷ましたいときこそ、温かい麦茶をゆっくり飲むのが正解です。体が熱くて早く涼しくなりたいのに、温かい飲み物なんて、と思うのは当然だと思います。ですが、体を効果的に冷ますには、冷たいタオルで首筋や脇の下を冷やすのが良いのです。基本的には冷たいものを体にあてて体を涼しくさせる、発熱時の対応と同じとお考えください。なお、汗をかいたときに飲む麦茶には失った電解質を補うため、少量の塩を入れることをお勧めします。

また、夏の風物詩にスイカがあります。ウリは、体の熱を取り去ります。ゆえに常温の(せいぜい井戸水で冷やす程度の)スイカを食べると涼しくなります。さらに少し塩を振ることで、電解質が補えるうえ、甘さが増します。基本的に、水気を多く含む夏野菜はほぼ体を冷やしますので、一度に大量に食べるのは控えましょう。スイカも食べたうえで、夏野菜も食べるなら、サラダにするのではなくて、火を通すとよいでしょう。加熱調理すれば夏野菜でも体を冷やしません。

そういう訳で、熱を冷ますには首に手拭い(中に保冷剤)、スイカに温かい麦茶が最強コンビです。

参考
  1. 用語集:鬱(うつ)熱(うつねつ)│難病情報センター<2023年7月13日閲覧>

中田 英之(なかた ひでゆき)先生
泉州統合クリニック 院長
1995年防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院産婦人科、慶応義塾大学医学部漢方医学講座、練馬総合病院 漢方医学センターを経て、2021年に泉州統合クリニックを開院。ライフワークである「養生」を重視した臨床を行っている。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。

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