<『便秘』の改善と漢方薬&過敏性腸症候群にも漢方薬が役立つ 編集後記>
多くの人が悩む「便秘」 女性の半数近くが悩んでいるというデータも
便秘や下痢など、多くの人が悩んでいる症状について、川崎医科大学総合医療センターの眞部紀明先生に2回にわたってお話を伺いました。
「2019年国民生活基礎調査」によると、便秘と自覚のある人は、人口1,000人あたり34.8%、特に女性では、43.7%もの人が便秘を自覚しているという結果が出ています1)。
また同調査では、下痢に悩む人の割合は人口1,000人あたり17.6%と報告されています。
快食・快眠と並んで、快便は健康的な生活を支える三原則のひとつと言われています2)。
食べること、眠ることは、健康維持のために比較的意識が向きやすいものではありますが「出す」ことについても、ただなんとなく「出ればいい」というものではありません。現在のお腹の状態が適切かどうか、記事を読んで一度ご自身の生活を振り返り、見直すきっかけにしてほしいと思います。
特に便秘編で眞部先生は「自分では便秘ではないと捉えている人のうち、15%くらいは実は便秘だった」とおっしゃっています。「毎日出ているから問題ないだろう」。一般的には、そう考えるのが普通です。しかし、記事でも紹介されていた「慢性便秘診療ガイドライン2017」3)による便秘の定義によれば、便を出しづらい、何度トイレに行っても出し切れていないような感じがある、時間がかかるということも便秘になるのだそうです。
生活の質が低下しても自己流で対処
少し古いものですが、2014年にアボットジャパン株式会社(現・アボットジャパン合同会社)が直近1年間に便秘の症状があった人約3万人に行った調査があります4)。
この調査によると、「眠れない」「怒りっぽくなる・イライラする」「仕事や家事が億劫」というQOL(生活の質)に影響を与える自覚症状を持つ人が8割近くに上ったにも関わらず、実際に医療機関を受診した人は2割未満ということが明らかになりました。
QOLを低下させるような自覚症状があって困ってはいるものの、水分を取る、食生活を改善する、運動をする、健康食品を取るなど、自己流の改善を試みている人が多いこともこの調査ではわかっています。
こうしたことからわかるのは、便秘で悩む人の多くが「便秘くらいで病院へ行くなんて」と思っているということではないでしょうか。
同じお腹の症状でも、下痢が続くと「大きな病気かもしれない」と医療機関を受診しても、便秘は「昔からだから」「なんとなく恥ずかしいから」と専門家へ頼ることを忘れてしまいがちになるのかもしれません。
腸内環境が新たな病気を生むことも
「脳腸相関」といって、脳と腸が互いに影響し合っているという概念があります。「腸は第二の脳」とも呼ばれ、独自の神経ネットワークを持っていることが明らかになってきました。緊張すると胃が痛くなったり、ストレスがかかると便秘や下痢になるというのは、脳と腸が影響しあっていることがわかるいい例です。
また、腸の状態が悪いと、お腹の症状だけでなく、うつ病5)や肥満6)などへも影響があることがわかってきています。
「たかが便秘」「いつものことだから」と諦めてしまう前に、ぜひ一度医療機関を受診し、健康な「よいお腹」を作っていきましょう。
- 参考
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- 厚生労働省│2019年国民生活基礎調査の概況 第9表 性・年齢階級・症状(複数回答)別にみた世帯人員・有訴者数・有訴者率(人口千対)<2022年3月8日閲覧>
- 厚生労働省│e-ヘルスネット「便秘と食習慣」<2022年3月8日閲覧>
- 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017, 南江堂, 東京, 2017
- PR TIMES│アボット 便秘有症者の意識調査結果を発表 -便秘のときの困りごとのトップ3は 「眠れない」「イライラ」「仕事や家事が億劫」-<2022年3月8日閲覧>
- Aizawa E, et al. J Affect Disord 2016; 202: 254-257
- 坊内良太郎ほか. 日内会誌 2015; 104(1): 57-65