<コロナ禍のストレス対策 編集後記> 気付いていないストレスに向き合うことも大切なセルフケア
ストレスによって生じた体の変化に気付きましょう
新型コロナウイルス感染症の流行の長期化で、自粛生活も長く続いています。思うように外出ができないことや、在宅勤務などによる生活の大きな変化によって、気が付かないうちに、私たちの心と体へかかるストレスも大きくなっています。その一方で、友人と気軽に会うこともできず、さまざまなイベントも自粛されていて、ストレス解消の手段も少なくなっています。こうした毎日の中で、知らず知らずのうちにストレスは蓄積し、私たちの心や体、日常生活にさまざまな変化をもたらしています。皆さんご自身、また周囲の人で下記のような症状に心当たりはないでしょうか。
心理的側面
- 抑うつ感
- 意欲や集中力の低下
- おっくう感
- イライラ感・怒りっぽくなる
- 不安感
- 緊張感
身体的側面
- 高血圧
- 胃・十二指腸潰瘍
- 首や肩のこり
- 動悸・息切れ
- 下痢・便秘
- 吐き気
- 頭痛・めまい
- 眠れない・何度も目が覚める
- 食欲不振
- だるさ・疲れやすさ
行動的側面
- 遅刻や早退が増える
- 酒量やたばこが増える
- 食事の量が増えるまたは減るなど
- 作業効率の低下
- 作業場の事故
- ミスが増える
厚生労働省│こころの健康 気づきのヒント集 p.3<2021年9月10日閲覧>
ストレス研究で有名な生理学者のハンス・セリエは「ストレスは人生のスパイスである」と述べています1)。適度な興奮や緊張感は、仕事や勉強の能率を上げるために大切なものだといいます。しかし、そのストレスが許容量を超えてしまうと、心も体も適応できなくなり、さまざまな不調が生じてしまうのです。
これが漢方医学でいう「未病」の状態です。
vol.2で、渡辺先生もおっしゃっていたように、未病は未病のうちに対処をすれば早めに健康の状態に戻ることができますが、そのままにしているとやがて病気になり、健康な状態に戻すのに多くの時間が必要となってしまいます。未病を未病のうちに終わらせるためにも、まずは第一歩として、自分自身の今の状態、どれだけストレスを抱えているかどうかを知ることから始めてほしいと思います。
自分自身の取扱説明書を作ってストレスに対処する
ストレスは何も、悪いことばかりでたまっていくわけではありません。結婚や自分自身の昇進や昇格、収入が増加すること、新しい家族が増えることなど、よい出来事でもストレスがかかるといわれています2)。そのため、渡辺先生がおっしゃっていたように普段から「内なる正気(せいき)」を高め、さまざまなストレスから自分自身の心と体を守っていくことが必要なのです。その方法として、渡辺先生は、運動、入浴、食事の大切さを説いていらっしゃいました。そのほかに、読書をしたり、絵を描いたり、音楽を聞いたりと趣味の活動を行ってみたり、自粛生活を利用して家の片づけをしてみるのもいいかもしれません。近年、瞑想や太極拳などのリラックス効果が科学的に証明されつつあり、期待されています。
大切なのは「誰かに言われたから」「みんながいいと言っていたから」とそれをそのままうのみにしないことです。自分はどんなときにストレスがたまって、どんな方法ならストレスを発散できるのか、そして取り入れられそうな内なる正気を補える方法は何なのか、自分自身の取扱説明書を作っておくことがセルフケアでは重要なポイントになってくると思います。コロナ禍が続き、ストレスフルな生活を送る中で、ぜひご自身と向き合う時間を作ってみていただければと思います。
- 参考
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- 厚生労働省│こころの健康 気づきのヒント集 p.3<2021年9月10日閲覧>
- 夏目誠ほか. Bull Inst Public Health 1993; 42(3): 402-412/li>