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コロナ禍のストレス対策 Vol.1 心と体はつながっている 「正しく恐れる」ことが大切

公開日:2021.07.19
カテゴリー:病気と漢方

 新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中、生活の変化や先の見えない状況が続く不安などからストレスを抱える人が増えています。
 2021年2月に発表された国立成育医療研究センターによる「コロナ✕こどもアンケート」第4回調査1)では、高校生の30%、中学生の24%、小学4〜6年生の15%に、中等度以上のうつ症状があるとされ、その割合の高さと、ストレスの影響が年代に関係なく及んでいるという現実が明らかになりました。コロナ禍の中、私たちはストレスとどう向き合うべきなのでしょうか。修琴堂大塚医院院長の渡辺賢治先生にお伺いしました。Vol.1は、ストレスが心に与える影響についてです。

相手を知って「正しく恐れる」

 コロナ禍で、みなさんの健康状態は二極化していると感じます。新型コロナウイルスに対して「正しく恐れる」ことができている人は、運動習慣を欠かさず、コロナ禍をきっかけに食事の内容や生活習慣を見直すことで、より健康な状態を維持できています。一方、「正しく恐れる」ことができていない人は、変異株やワクチンのリスク、重症者の増加、医療現場の切迫など、不安をあおるような情報ばかり気にし過ぎて、外出もままならなくなり、今までの運動習慣でさえやめてしまっています。それに加え、不安やストレスから暴飲暴食に走る、夜更かしで不規則な生活になるなど、体調を崩している方もいるのです。

 何に対しても大切なのは、「正しく恐れる」ことです。「正しく恐れる」とは、相手をよく知るということです。例えば今回は新型コロナウイルスという未知のウイルスではありますが、ウイルスはそれ自身で増えることはできず、粘膜などの細胞に付着して入り込み、増えるということがわかっています。ですから皮膚からウイルスが入り込むことはありません。ウイルスを拡散させないよう、また、口や鼻、眼などの粘膜からウイルスを吸い込まないようにマスクをすること、正しく手洗い・うがい・消毒をすることなどで予防をし、密(密閉・密集・密接)を避けていれば、外出をむやみに怖がることはないのです。

心の状態が体にも影響する

 ある60代の患者さんは、「正しく恐れる」ことができていなかったために、仕事へ行くことも、たまの外出さえも怖くてできなくなってしまったといいます。すると、筋力は衰え、さらには気力までなくしてしまい、うつ状態となり、受診をされたのです。

 漢方医学では「心身一如」という言葉がよく使われています。これは、心と体はつながっているという意味で、心の不調は体の不調にも影響し、体の不調は心の不調にも影響するという考え方のことです。例えば、体のどこかにずっと痛みがあると、心まで憂うつになってきませんか? 最近では、新型コロナウイルスに対する過剰な恐れや不安がストレスとなり、心だけでなく体にもさまざまな症状が現れていることがあります。

ストレスを受け続けることで心にも体にも不調が

 自律神経は、身体の機能を調整する機能を持っており、交感神経と副交感神経があります。交感神経は身体を活発に動かすときに働き、副交感神経は身体を休めるときに働きます。日中は交感神経が活発になり、夕方頃になると副交感神経が活発になるといった形で、交互にバランスを取りながら身体の状態を調整しています。交感神経が優位に働いているとき、免疫をつかさどるリンパ球は自分たちの巣(リンパ節)に留まり、敵の情報をほかのリンパ球にインプットしたり、再教育をしたりしています。一方、副交感神経が優位に働くとリンパ球は血液中に放出され、身体中をパトロールし、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などを退治します。例えれば、署に戻ってみんなで犯人の特徴を覚えているときは交感神経が優位、警察官が出動しているときは副交感神経が優位、という感じです。しかし、ストレスがかかった状態というのは、交感神経が常に優位な状態になっています。また、不規則な生活も交感神経を刺激します。すると、副交感神経が働く時間が少なくなるためにパトロールができなくなり、免疫力も落ちてしまうのです。これが、「不規則な生活や、ストレスの多い生活をしていると自律神経が乱れる」といわれるゆえんです。そのほかにも、例えば緊張しているときは手足が冷たくなるように、交感神経が優位なときは、血流も悪くなります。そのため、体にも心にもさまざまな不調が出てきてしまうのです。

 ストレスによって、体や心にはどのような症状が出るのでしょうか。Vol.2ではその症状と対策法を渡辺先生にお伺いします。

参考
  1. 「コロナ✕こどもアンケート」第4回調査報告 ダイジェスト版│国立成育医療研究センター<2021年6月16日閲覧>

渡辺賢治(わたなべ・けんじ)先生
修琴堂大塚医院院長

慶應義塾大学医学部卒業、同大医学部内科学教室、米国スタンフォード大学遺伝学教室で免疫学を学ぶ。帰国後漢方を大塚恭男に学ぶ。
慶應義塾大学医学部漢方医学センター長、慶應義塾大学教授を経て2019年より修琴堂大塚医院院長、慶應義塾大学医学部客員教授。

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