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<編集後記>気象病対策の考え方と有効な漢方薬

公開日:2020.09.08
カテゴリー:病気と漢方

 低気圧が来ると頭痛や肩こりがひどくなる、雨の日や台風の日はめまいや吐き気、全身けん怠感が強くなるなど、気象の変化によるさまざまな体調不良に悩まれている方も多いのではないでしょうか――。
 “気圧や気温の変化で体調不良…「気象病」に漢方は有効?”では、気象病患者の診察や治療を多く手がける、せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司先生にお話を伺い、気象病の概要や漢方の有効性を紹介しました。

 気圧差や寒暖差、湿気などで起こる体調不良は「気象病」と呼ばれています。正式な病名ではありませんが、市販薬なども登場しており、ここ最近は認知度も上がってきています。せたがや内科・神経内科クリニックの久手堅司院長は、気象病治療を多く手がけている先生ですが、もともとの専門分野は頭痛です。頭痛には片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛などの種類がありますが、その治療を行う中で、気圧の変化に弱く、天候が悪くなると、頭痛以外にもめまいや吐き気、肩こり、全身けん怠感がひどくなる、という患者さんが多くいたことから、気象病の治療も始められたそうです。

 実際に、私自身も片頭痛があり、久手堅先生とは別の頭痛外来に一年以上前から通っています。夕方頃になると毎日のように「閃輝暗点(せんきあんてん)」といって目の前に「月」のようなギザギザした光のようなものが現れ、文字が読みにくくなったりしていると、目の奥のほうから痛みが始まり、ズキズキした頭痛が起こる……。最初は「PCの見過ぎで目が疲れているのかな」程度でしたが、それがだんだんと耐えられない痛みに変わっていくことで片頭痛だと気づきました。それ以外にも突然めまいが起きて立ち上がれなくなったり、頭痛やめまいがひどいときは、吐き気までしてくる始末。今回、久手堅先生にお会いする前から、天候が悪いときに不調が起きやすかったり、不調の程度が重くなりやすかったりと、朝から天気が悪いときは布団から起き上がれないこともしばしばでした。そのため「自分自身も気象病かも」とは感じていました。

 久手堅先生の診察では、どのような症状で悩んでいるのか、気象病のチェックリストなどの問診票を記入した後に体の軸のチェックをします。本編でも紹介したように、気象病の原因のひとつに、骨格のゆがみがあると久手堅先生が考えられているからです。その方法は、いつもどおりの姿勢で立ち、目をつぶって、ゆっくりと深呼吸をしながら力を抜いて立ってみる、というものです。これで体の縦の軸と横の軸が傾いていないか、先生に確認してもらいました(ご自宅でもできるので、気象病かも、という方はスマホなどで撮影して確認してみるとよいと思います)。先生のクリニックを訪れた日が雨だったということもありますが、私はこのチェックで目をつぶった途端にバランスを崩して倒れてしまいました。先生によれば「ストレートネック、反り腰になっていて、右肩も下がっている。目を開いていればなんとかバランスを取れるが、骨格のゆがみが強く、軸がかなり不安定なために、目をつぶった途端に倒れてしまった」とのこと。ストレートネックや反り腰は、高いヒールを好んで履く女性に多いそうです。

 久手堅先生は「気象病と診断される方は、骨格のゆがみが強い場合がほとんどで、姿勢のチェックやレントゲンで猫背やストレートネック、反り腰などが強く出ています。筋肉の緊張や痛みにも左右差があったり、感覚すらなくなったりしている場合もあります。
 免震構造がなされていない曲がったビルは、地震の揺れに耐えることが困難ですが、骨格のゆがみにも同じことが言えます。気圧の変化という揺れを頭蓋骨内にある内耳で感じてしまいますので、骨格が整っていないと耐えることができないのです」とおっしゃいます。気象病がひどい人だと、少しの気圧変化にも影響を受けるようになってしまい、患者さんの中にはフィリピン沖やマリアナ諸島での台風発生を感じる人もいるそうです。たしかに私自身、フィリピンやマリアナでの台風発生までは感じられませんが、居住地から遠く離れた地方での台風発生や異常気象には、頭痛やめまいなどで反応します。いかに骨格のゆがみが強いのか、またそれが頭痛や気象病を引き起こしているのかを痛感しました。

 私自身、取材をきっかけに、通院中の頭痛外来で処方されている片頭痛の薬のほか、気象病については、普段服用中の漢方薬に、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅってんまとう)をプラスしました。半夏白朮天麻湯は、頭痛のほかに、めまいやむくみにも効果のある漢方薬です。さらに、日頃からストレッチをしたり、仕事中にも耳やあごをほぐしたりすることを意識しています。まだ完全にスッキリ!というわけではありませんが、少しずつ体が楽になってきているのを実感しています。

 ここ数年、日本国内でもたびたび異常気象が起こり、各地で豪雨などによる大きな被害が出ています。被災された方へ心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。また、この異常気象によって、頭痛やめまいなどさまざまな症状に困っている方々も多くいらっしゃると思います。低気圧による不調への市販薬に漢方薬が用いられているように、漢方薬はこうした気象病による複数の症状の緩和にも効果を発揮してくれます。症状があって辛いときは無理せず、漢方薬の力に頼ってみることを考えてみてはいかがでしょうか。(大場真代)

参考
  • 久手堅司著. 最高のパフォーマンスを引き出す自律神経の整え方. クロスメディアパブリッシング; 2018

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