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母親の卵巣がんの手術後、身体症状に神経質になってしまった母娘 後編

公開日:2012.01.10

母親の卵巣がんの手術後、身体症状に神経質になってしまった母娘

鮫島さん(仮名)、40歳代 女性。

再び、外来にて・・・

わたし
「鮫島さん、どうぞ、お入りください」
鮫島さん
「はい。きょうも娘と一緒なんですけれど」
わたし
「どうぞ、ご一緒に」
鮫島さん
「ありがとうございます。先日は夜遅くに、呼び出してしまい、本当に申し訳なかったと思います。本当に大した病気でもなかったのに」
わたし
「いえいえ、(お二人にとっては)大変だったですね。その後、夏子さんは体調、大丈夫ですか?」
夏子さん
「はい、先生に処方していただいた『香蘇散(こうそさん)』が効いたのか、ドキドキすることもなくなり、夜もぐっすり寝られるようになりました」
わたし
「そうでしたか、それは良かった」
鮫島さん
「同じ薬を私もいただいて飲んでいるんですけれど、私の方も調子がいいです」
わたし
「それは良かった。お母さんの病気にもいいと思って、お出ししたんですよ。娘さんと一緒の病態でしたからね」
鮫島さん
「え?腹痛の娘と私が同じ病気だったんですか?」
わたし
「いえいえ、そうじゃなくて、お母さんと娘さん、本当にお互いをよく想い合っておいででしたから、知らないうちに同じような状態になってしまっていたようですよ」
鮫島親子
「というのは?どういうことでしょう」
わたし
「はい、お二人とも漢方医学での診断は、『気虚』の状態だったんです。症状は、お母さんが『不安』、夏子さんが『腹痛』と全く異なっていましたけれどね。どちらも原因は精神的なストレスだったんじゃないか?と考えて、治療に用いる漢方薬は同じものを選ばせていただきました」
夏子さん
「なるほど。でも、先生には、本当に感謝しているんですよ」
わたし
「いえいえ、僕の方こそ、お二人には本当に多くのことを学ばせていただきました。心から感謝しているんですよ。夏子さん、今度、お腹が痛くなった時のために、特効薬をお教えしますよ」
夏子さん
「え!特効薬ですか?」
わたし
「はい。もし、お腹が痛くなりそうになったら、お母さんにギュッと抱きしめてもらってください」
鮫島さん
「え!私がですか?」
わたし
「はい。だって、こんなに母親想いの娘に、この1年間、鮫島さんは頼り放しだったんでしょ。どうか、娘孝行と思って力一杯抱きしめてあげて下さいよ。それが一番の特効薬です」

 診察室に、フワッと和やかな空気が広がるのを感じた。

今津嘉宏(いまづ・よしひろ)先生
芝大門 いまづクリニック 院長
1988年藤田保健衛生大学医学部 卒業、1991年慶應義塾大学医学部外科 助手、2005年恩賜財団東京都済生会中央病院外科 副医長、2009年慶應義塾大学医学部漢方医学センター 助教、2011年北里大学薬学部 非常勤講師、薬学教育センター社会薬学部門 講座研究員、2011年麻布ミューズクリニック 院長、2013年芝大門 いまづクリニック 院長

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