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カサカサ肌の痒みに悩む70代女性

公開日:2012.12.07

カサカサ肌の痒みに悩む70代女性

 70代女性が下肢静脈瘤のために来院された。下肢静脈瘤とは、簡単に言えば静脈の血液が重力の影響で膝下に淀んでしまう病気である。静脈の血液が淀むと様々な悪さを起こす。まず血管が浮き上がって、見た目がボコボコになる。そして膝下の倦怠感(だるさ)、重苦しさ、むくみ、こむら返り(脚がつる)などの症状がでる。ここまでは中くらいの状態である(中等症)。これが悪化すると皮膚にダメージが及び、湿疹ができたり皮膚炎をおこしたりする(重症)。中には、皮膚炎の所が痒くてかき壊してしまう方もいる。下肢静脈瘤に伴う皮膚炎や症状は弾性ストッキング(弾力のあるストッキング)や弾性包帯(弾力のある包帯)を使い、圧迫することで改善するケースが多いが、いったん皮膚炎を起こしてしまうと、皮膚炎が治まっても皮膚がカサカサして痒みが残ったりする。
 今回の方は初めて当院の血管外科(下肢静脈瘤センター)を受診されたとき、既に皮膚炎を起こしていた。弾性ストッキングでの圧迫で皮膚炎は改善したものの、炎症を起こしていた部分を中心にその周りまで皮膚がカサカサして、入浴後などに痒くて仕方がないと言う。そこで、乾燥肌の痒みに有効とされている、エキス剤の当帰飲子(とうきいんし)を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方した。すると2週間後には「痒みが楽になっている」とのこと。実は皮膚炎の部分だけが痒かった訳ではなく、全身が乾燥して痒みを感じていたそうだが、当帰飲子を飲むようになってからは痒みが楽になったそうである。冬の間は特に乾燥して痒いと言うので、痒みがあるうちは内服を継続した。また、同じように皮膚が乾燥して痒みが強いと言う70代の男性にも当帰飲子を処方した。その方はかかりつけの先生から痒み止めの軟膏をもらっており、長いこと塗っていたそうだが、当帰飲子を飲むようになってからは塗り薬を使う頻度が随分減ったと感謝された。
 ところで、漢方薬の中にも紫雲膏という塗り薬が存在する。紫雲膏は肌荒れや火傷、湿疹など色々な皮膚のトラブルに使用されるが、紫雲膏には豚脂(豚の脂)が入っており臭いが気になると言う方が結構いるので、私はまず内服の当帰飲子を処方するようにしている。当帰飲子は皮膚の水分が足りなくなってカサカサして痒いと言う人に処方すると喜ばれることがしばしばある。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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