医療法人 広瀬クリニック 木許泉院長
~漢方薬の新時代診療風景~
漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。
知識と経験に基づいた漢方治療を
漢方にも日本東洋医学会が設けている専門医制度があります。「小児科専門医」「眼科専門医」と同じような専門医制度ですが、実は基本領域の専門医を取得して後に漢方専門医を取ることになっています。各学会、私の場合は日本小児科学会ですが、小児科専門医となってはじめて漢方専門医の受験資格が認められるのです。さらに、知識豊富な指導医のもとで3年以上研修し、東洋医学が必要な患者さんを様々に経験し学びます。
患者さんの状態を見て、希望に沿ったアプローチ
漢方薬の処方は、患者さんの身体の状態から判断します。漢方薬による治療を希望されない方もいらっしゃいますので、初診の際、特に慢性疾患の患者さんの場合は、どんな治療を希望されるのかを聞いてアプローチするよう心がけています。
当クリニックは、小児科以外に内科と皮膚科を標榜しているのでご年配の方までいらっしゃいます。「家族が漢方を飲んでいたから」と処方を希望されて来院される方もいます。漢方薬については「やっぱり効くかも」や「いいかも」などプラス思考で飲んでほしいという気持ちがありますね。ご本人が拒否の姿勢でなければ、飲んでみますか?とこちらから提案することはあります。急性疾患に関しては、漢方だけではなく風邪薬や抗生剤を必要に応じて処方します。皮膚疾患の場合は、塗り薬などを処方し、患者さんが漢方薬を希望された時に処方を提案するようにしています。
多様な効能を持つ漢方薬を症状に合わせて使い分ける
漢方薬を求めてこられる方は多いですね。常に漢方薬を処方している方もいれば、花粉症の時期だけとかインフルエンザの時だけという処方もしています。全体として、当院で常に漢方治療をしている方は、4割から5割といったところでしょうか。
インフルエンザにも漢方薬は効果的です。タミフルなどの抗インフルエンザ薬を希望される患者さんには処方しますが、10代でタミフルが使いにくい患者さんや抗インフルエンザ薬に過敏反応を示すケースでは、重症度が高くなければ、漢方薬を選択する場合が多いです。
漢方治療を求めて来院される方は”冷え”の症状のある方が多いですね。また、慢性疾患やアレルギーの体質改善、あとは胃もたれ、下痢しやすいなど胃腸の症状などで来られます。女性では更年期がらみも多いです。
漢方における”冷え”の考え方は、東洋医学ならではの発想だなと思います。西洋医学ですと血流改善剤はありますが、ほとんど冷えに対する薬ってないですよね。漢方では胃腸を温めたり、血液の流れを促進して冷えを改善して末梢まで温めてあげたりと、冷えに対する漢方薬がたくさんあります。冷えに対してアプローチしやすいという利点があるのは、患者さんにも喜ばれるところです。
漢方薬については、患者さんに勉強させてもらうこともあります。上手に漢方薬を使いこなしている方の話を聞いたり、患者さんから「この時はこれが効いたからこれを飲みたい」「これは合わないからこっちが良い」などの要望を伺ったりします。いろんな患者さんの声を聞きながら、自分自身が学び、日々知識を深めていく努力をしています。
妥協することなく、より深く
今年で広瀬クリニックを継いで5年が経ちました。まずはこのクリニックを継承していくという目標でやってきました。漢方以外にもさまざまな治療を行っていて、それらを自分なりに検証し、何を残していくかという試行錯誤も5年かけてやってきました。漢方に関しては、5年・10年という間隔ではなく、もっと長い期間で、より掘り下げてやっていきたいですね。例えば、いくつかテーマを決めて、より積極的に応用して、検証し深めながらやっていきたい。もっと勉強しなければなりません。
施設としては、クリニック以外にもサンドバスという温浴の施設があるので、今の施設を活かしながら、患者さんがくつろげて、癒され、自己治癒力が高まるような場所を作っていきたいと思います。東洋医学と西洋医学のいいところを採用した全人的な治療を目指しているので、代替医療も取り入れ、患者さんのためになるような治療をしていきたいです。
医療法人 広瀬クリニック
医院ホームページ:http://www.hirose-cl.com/
JR刈谷駅または名鉄刈谷駅南口より、南へ徒歩10分。待合室は明るく広々として過ごしやすく、専用のキッズスペースを備えているので、お子様連れでも安心です。
詳しい道案内は医院ホームページから。
診療科目
小児科、内科、アレルギー科、皮膚科
木許泉(きもと・いずみ)院長略歴
小牧市民病院、公立陶生病院、名古屋大学小児科、同大学院、春日井市民病院を経て、平成22年5月、広瀬クリニック副院長。
同年7月、広瀬クリニック院長就任。医学博士。
■所属・資格他
日本小児科学会 小児科専門医、日本東洋医学会 漢方専門医、日本アレルギー学会 アレルギー専門医、高濃度ビタミンC点滴療法認定医