ちいろば子供クリニック 木林正弘院長
~漢方薬の新時代診療風景~
漢方薬は、一般に知られる処方薬(西洋医学)では対処が難しい症状や疾患に対して、西洋医学を補完する使われ方も多く、今後の医療でもますます重要な役割を果たすと考えられます。
近年、漢方薬の特性については科学的な解明が進んだこともあって、エビデンス重視の治療方針を取る医師の間でも漢方薬が使用されることが増えています。
漢方薬を正しく理解して正しく使うことで、治療に、患者さんに役立てたい。日々勉強を重ねる、身近な病院の身近なドクターに、漢方活用の様子を直接伺いました。ドクターの人となりも見えてきます。
親類の早すぎる死がきっかけで医師の道へ
小さい頃から音楽の道に進みたいと考えていたのですが、高校3年の時、一歳下の従兄弟が白血病で亡くなりました。小児がんを患っていたのですがあまりにも早すぎる死に、自分自身も医師になって従兄弟のような病気を患っている人たちを助けたいと決意。2年浪人しましたが医学の道に進みました。
小児科医になって思うことは、子どもの治療は余白が大きく将来を左右する分、意味がものすごく大きいと感じています。よく「最近の子どもは弱くなった」と言われますが、子どもは大人が思っている以上にフレキシブル。もちろん身体の弱い子もいますが強い子もいる。それよりも核家族化したことでお母さん方のストレスが大きくなっているのではないかと思っています。
だからこそ私は診察の際、お子さん、ご両親ともコミュニケーションを大事にするようにしています。
研修医時代に漢方薬の面白さを知る
漢方との出会いは青森で研修を行っている時でした。小児の腎臓疾患に対して漢方薬を使っていたのです。効く効かないはありましたが、効く子どもには本当によく効いていた印象がありました。その後小樽の病院で漢方医と親しくなり、そこから自分自身でも使うようになりました。例えばてんかんのお子さんに対して、抗けいれん剤を減らして漢方薬を併用したり、便秘のお子さんに漢方薬を服用してもらったり。慢性疾患の多い病院だったので漢方薬を使う機会も多かったですし、効果に対しても手応えを感じることができました。
私には6人の子どもがいるのですが、子ども達にも漢方薬を服用させています。特に三男と四男は喘息持ちなのですが、三男と四男では同じ兄弟でも使う漢方薬が違うんです。こういうのも漢方薬の面白いところだと感じますね。
証に合えば「美味しい」と感じて飲み続けてくれる
漢方薬は副作用が少なく身体にやさしいというイメージが患者さんの中にも浸透してきていると感じますが、小児科の世界ではまだ浸透しているとはいえない状況です。というのも漢方薬をお子さんに服用させるためにはお母さん方に負担がかかってしまうので、それよりも「すぐに治る薬がほしい」といわれてしまうことが多いからです。お母さんご自身では服用していても、自分の子どもには…という方も少なくありません。
そんな時無理に勧めることはしませんが、ぜんそくやアトピーの場合は漢方薬で改善することも多いので根気よく説明するようにしています。あるお子さんは証にぴったり合っていたのでしょう、「美味しい」と漢方薬をお菓子代わりに飲み続けてくれています。証にぴったり合うと美味しいと感じるところも漢方薬の面白いところです。当院ではアレルギー疾患のお子さんも多くいらっしゃるので、漢方薬との併用で少しでも改善が見られた時は非常に嬉しいですね。
漢方薬を中心にした総合施設を作りたい
私も自分自身で健康維持のために数種類の漢方薬を服用しています。自分自身で飲んでいても漢方薬の強みは長く効くということだと思っています。これからも漢方薬を極め、鍼灸や断食療法などもできるようなクリニックを作ることが私の夢です。
ちいろば子供クリニック
地下鉄東豊線栄町駅から徒歩1分。メディカルビルの中にある。
診療科目
小児科・アレルギー科
木林正弘(きばやし・まさひろ)院長略歴
1987年 青森県立中央病院小児科
1990年 江差病院小児科 部長
1991年 国立療養所八雲病院 癇癪・筋疾患の治療および研修
1992年 国立療養所小樽病院
1996年 小樽協会病院小児科
1997年 留萌市立病院小児科部長
1999年 医療社団法人ちいろば子供クリニック開院