がん治療中の辛い症状は漢方薬でも改善できる!<第5回>「抑うつ状態や気分の落ち込み」には「蘇葉」や「人参・黄耆」が含まれる漢方薬を
公開日:2016.02.12
カテゴリー:がん治療と漢方
がん患者さんには、肉体的にも精神的にも大きなストレスやプレッシャーが押しかかります。加えて、乳がんや子宮がんなどの治療で用いられるホルモン治療の副作用でも抑うつ状態になることがあります。
香蘇散、半夏厚朴湯
がん患者さんに限らず、うつ病の人の治療にもよく使われている生薬がシソの葉を乾燥させた「蘇葉(そよう)」です。蘇葉は抑うつ作用を有し、気のめぐりを良くするといわれています。蘇葉を含む漢方薬には、香蘇散(こうそさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)があります。特に、半夏厚朴湯には、ホオノキの樹皮や根皮を乾燥した厚朴が含まれており、これが気分を明るくする効果があることが臨床研究で報告されています。
補中益気湯、十全大補湯
抑うつ状態が全身にまで影響を及ぼしている場合は、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)が用いられます。どちらも人参(にんじん)や黄耆(おうごん)という生薬が含まれていて、全身がだるい、元気がない、疲れやしいなどの症状に使われます。補中益気湯は疲れて胃腸が弱っているときなどの慢性症状に使われ十全大補湯は同じく消化機能の改善、皮膚のカサカサ、貧血傾向に使われます。体力を回復させる効果があり、どちらも動物実験などで体の免疫力を高めることがわかっています。
うつの兆候に気づいたときは、ただの気分の落ち込みと思わず、主治医やご家族にそのことを伝えることが大切です。またご家族や周囲の人も、その状況に気づいてあげられるようサポートをしてあげてください。
上園保仁先生
国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野 分野長
国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野 分野長
1989年産業医科大学大学院 修了、医学博士 取得、1991年米国カリフォルニア工科大学生物学部門 ポスドクとして留学、1992年産業医科大学薬理学講座 助手、2004年長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・内臓薬理学講座 助教授、2010年独立行政法人国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野 分野長。
日本薬理学会編集委員会委員、北米神経科学会 会員、日本緩和医療薬学会 監事、日本緩和医療学会 がん性疼痛ガイドライン作業部会委員、補完代替医療ガイドライン改定WPG員、日本癌学会 会員。
日本薬理学会編集委員会委員、北米神経科学会 会員、日本緩和医療薬学会 監事、日本緩和医療学会 がん性疼痛ガイドライン作業部会委員、補完代替医療ガイドライン改定WPG員、日本癌学会 会員。