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がん治療中の辛い症状は漢方薬でも改善できる!<第4回>「口内炎」には「半夏瀉心湯」が効果あり

公開日:2016.02.10
カテゴリー:がん治療と漢方

 口内炎はがん治療中の患者さんに比較的多くみられる症状です。抗がん剤による口内炎の特徴は、(1)痛みが非常に強く、小さい潰瘍であっても痛む、(2)免疫力低下によって菌が増殖し、増悪を引き起こし、食事もしづらくなるということです。まれに重症化するケースもあり、その際には抗がん剤治療の中止も検討しなければならないほどです。

 がん治療中の患者さんにできる口内炎は、その範囲が広いことが特徴です。抗がん剤の副作用で食欲が低下しているのに、さらに口内炎で痛くて食べられないとなると、QOLの低下だけでなく、体重もどんどん低下していきます。がんの治療中は、体力を維持するためにも、なるべく自然な形で口から栄養補給をすることが重要です。できてしまった口内炎を早く治す、あるいは完全に治りきらないときでも食事をとれるくらいの痛みにまで抑えることが大切です。

 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)は、口内炎に対し、科学的な根拠をもって効果的であることが報告されました。口内炎ができるときには、痛みのもととなるプロスタグランジンという物質が大量に産生されます。半夏瀉心湯に含まれる生薬の黄ごん(おうごん)などのいくつかの生薬が、痛みの原因であるプロスタグランジンの産生を抑制し、口内炎の症状を軽くすることが分かっています。また、黄連(おうれん)には非常に強い抗菌作用があり、さらに含まれているいくつかの生薬には口内の上皮細胞の修復を強めることも研究の結果、明らかになっています。

半夏瀉心湯のうがいは効果あり

 そこで、半夏瀉心湯を水に溶かして、うがい薬として用いることがひとつの方法です。ブクブクとやる方法もありますが、もちろん飲んでも大丈夫ですし、抗がん剤による嘔気がある人や苦くて飲みにくい人は、うがいの後に吐き出しても大丈夫です。半夏瀉心湯のうがいについては、ほぼ味、形、香りが同じで作用のないプラセボ薬を用いて二重盲検作為化臨床試験が行われています。
 大腸がんで口内炎を有する患者さんにこの試験を行ったところ、口内炎の発症頻度は変わらなかったのですが、半夏瀉心湯でうがいをしたグループのほうは口内炎が治癒する期間が約半分になりました。この試験は、半夏瀉心湯が、科学的な根拠をもって有効であったことを示しています。

 とはいえ、漢方薬の場合は10人が10人とも同じ処方が効くわけではなく、同じ黄連などが含まれている黄連解毒湯や黄連湯なども試してみると効果があるかもしれません。このように実験等で明らかになった有効成分を含む生薬に注目して、その生薬の入っている漢方薬から次の一手を探すのも治療効果の高い漢方薬を見つける手段のひとつかもしれません。

上園保仁先生
国立がん研究センター研究所 がん患者病態生理研究分野 分野長

1989年産業医科大学大学院 修了、医学博士 取得、1991年米国カリフォルニア工科大学生物学部門 ポスドクとして留学、1992年産業医科大学薬理学講座 助手、2004年長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・内臓薬理学講座 助教授、2010年独立行政法人国立がん研究センター研究所がん患者病態生理研究分野 分野長。
日本薬理学会編集委員会委員、北米神経科学会 会員、日本緩和医療薬学会 監事、日本緩和医療学会 がん性疼痛ガイドライン作業部会委員、補完代替医療ガイドライン改定WPG員、日本癌学会 会員。

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