漢方医から観た「病気の成り立ちと悪化要因」とは?
6月に富山で行われた第66回日本東洋医学会学術総会主催の市民公開講座(共催:日本漢方生薬製剤協会)から、飯塚病院東洋医学センター 漢方診療科 部長の田原英一先生による講演「漢方医の眼で観る病気の成り立ちと悪化要因~治らない理由と治し方~」の模様を紹介します。
病気の原因となる内因・外因・不内外因
「漢方でとらえる病気の原因には内因、外因、不内外因の3種類があります」と田原先生。
感情の変化が原因となる内因は、喜・思・悲・憂・恐・驚・怒の7つの感情が、心・脾・肺・腎・肝の5つの臓器に影響を与えます。気候や環境変化を指す外因は、風・寒・暑・湿・燥・火の6つの要因が影響を与えます。不内外因は、飢餓・飽食や疲労、房事過多、外傷・虫獣傷などが挙げられます。
「これらの変化に敏感に対応することが病気の悪化を防ぐ第一歩となる」と田原先生はいいます。また、「人間関係やその場の雰囲気を大事にするあまり遠慮してしまい、悪化してしまうこともある」として、岸信介元総理大臣の健康訓とされる「転ぶな、風邪を引くな、義理を欠け」のうち、あえて「義理を欠」いた生き方について提案されました。
現代医療で見落とされがちな「冷え」
続いて、病気が治らない要因として田原先生は冷え・お血・水毒・気虚・腎虚の5つを挙げ、その中でも現代医療では冷えの対策を見落としている、と指摘しました。
田原先生は「なかなか治らない病気に悩む患者さんは、頑固な冷えがよく見られます。ところが、西洋医学的な立場では、冷えを“体質的なもの”と考えるため、積極的な治療が行われていません。冷えを改善することで、おおもとの病気による症状が改善することもよくあります」と語り、冷えの対策として、漢方薬や鍼灸のほか、体を温める食べ物(陽性食品)の摂取や運動、入浴や腹巻による物理的温熱、締め付けない衣類を着ることによる血行促進などを挙げました。
治る力を最大にするには
最後に田原先生は、「治る力」を最大にするための方法の1つとして、「“食う”“寝る”“出す”“遊ぶ(動く)”を整える」ことを提案しました。
「気侯の変化や自分の体の状態の変化に敏感になって、ちょっとした変化に気づき、無理をしない(頑張り過ぎない)こと。それが健康を保つ秘訣です。人が病気で亡くなるのは一生で1回のはずです。既にたくさんの病気を治してきた自分自身の自然治癒力を高めて健康を維持、増進しましょう」と結ばれました。
皆さんも日々の生活を振り返ってみてはいかがでしょうか。