漢方サポートセンターのある神奈川県立がんセンターが市民公開講座を開催
軟膏のお薬「紫雲膏」放射線治療に伴う皮膚障害を改善する
(神奈川県立がんセンター)
神奈川県立がんセンター臨床研究所は4月15日、横浜・旭区民文化センターで「がんの個性に挑む~テーラーメイド治療と漢方療法・ワクチン療法」と題した市民公開講座を開催。同センターの漢方サポートセンター東洋医学科部長 林明宗先生が、がん治療における漢方の応用について講演を行いました。
林先生はまず、がん患者さんは、がんそれ自体によるものに加え、抗がん剤の副作用や手術、放射線治療などのがん治療によって、気力や体力(元気)が低下しており、漢方でいうところの「気」や「血」がたおやかに循環できる環境にすることが重要、と解説。末梢神経障害や食欲不振に対して用いられる漢方薬とそのメカニズム、そして、実際の症例を分かりやすく説明しました。
そうしたなか、会場に集まった聴衆の関心を集めたのが、放射線治療に伴う皮膚障害に対する、軟膏のお薬「紫雲膏(しうんこう)」の症例です。がん治療における放射線治療では、痛みや皮膚損傷などの皮膚障害が起こる場合があります。
「紫雲膏は当帰と紫根に基剤であるゴマ油や蜜ろう、ラードを混ぜたものですが、当帰はかゆみを抑え、血流を改善する効果が、紫根には抗炎症作用が、そしてゴマ油や蜜ろう、ラードには殺菌作用があります」(林先生)
先生が治療に携わった患者さんのデータでは、全員で痛みやかゆみなどの自覚症状が大きく改善していることが分かっています。また、症状の改善に伴い、患部の見た目も大きく改善する様子が写真とともに説明されました。
12月には国内5か所目となる重粒子線治療施設が稼働
神奈川県立がんセンターの漢方サポートセンターは2014年4月に設立。がん治療における漢方診療機能はもちろん、薬膳を含む栄養サポート機能、地域の漢方専門医療機関の紹介といったがん患者さんのサポートに加え、東洋医学への理解促進や他診療機関からの医師研修の受け入れなど、がん治療における漢方医療の普及も積極的に行っています。
「開設以来、多くの患者さんが受診にいらっしゃいます。今では月あたり200名を超える患者さんをみています」(林先生)。さらに同センターでは2015年12月から、国内で5か所目となる重粒子線治療施設「i-ROCK」が稼働予定。「からだにやさしい治療」「生活の質を重視した治療」を提供する、とのこと。「より患者さんのためになる施設となることを目指していきます」(神奈川県立がんセンター病院長 本村茂樹先生)。
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