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冷えを主訴に来院した20代女性

公開日:2013.05.21

冷えを主訴に来院した20代女性

 20代の女性が冷えを主訴に来院した。手足の先がとても冷たく、体の奥の方も寒い感じがして、夏でも冬でも暖かい飲み物を好んで飲んでいるとのこと。また、就職した頃から、夕方になると憂鬱な感じになってしまうという。ただし自殺したいとまで思ったことは一度もない。
 実際に手足を触ると確かに冷たいが、動脈の拍動はしっかり触れており爪の色も良好なので、まずは体を暖めてもらおうと、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)のエキス剤を1回2.5グラム1日3回毎食前に処方し、温服(お湯のみ1杯分の熱いお湯に薬を1包溶かして飲むこと)を指導した。2週間後再診してもらい、不都合な症状が出ていないことを確認したが、この段階ではまだ効果を感じられないとのことであった。内服を継続してもらい更に2週間後の診察では、「少しずつ暖まっているような気がします」とのこと。しばらく内服を続けてもらったところで、本人から「やっぱり夕方には落ち込んでしまう」との訴えがあったので、エキス剤の小柴胡湯(しょうさいことう)を1回2.5グラム1日3回、当帰四逆加呉茱萸生姜湯と併用したところ、1ヶ月ほどで夕方の落ち込みに改善が見られた。いつも大体決まった時刻に気がめいってしまっていたのだが、最近は気づくとその時刻を過ぎており、元気でいられるという。また、冷えについてもかなり改善しているようで、「職場の先輩たちがカーディガンを着ているのに、自分だけは平気で脱いでいられます」と言ってくれた。
 その後、この女性は便秘もあったので、小柴胡湯をエキス剤の大柴胡湯(だいさいことう)に変更して処方した。小柴胡湯と大柴胡湯の差は、おおざっぱに言えば、下剤の代表格である大黄が入っているかいないかである。しかし冷えや落ち込みといった症状については悪くなることはなかったが、便秘は改善しなかった。そこで大柴胡湯を小柴胡湯にもどし、別の下剤であるエキス剤の麻子仁丸(ましにんがん)を処方した。1回2.5グラム1日1回寝る前の内服から始めてもらい、効果が不十分だと思ったら1回5グラムに増やすように伝えておいた。2週間後の再診時には「1回5グラムの方が調子がいい」というので、便秘に対しては麻子仁丸で対応することになった。現在も3種類の内服を継続しており調子の良い状態を保てている。

堀口定昭(ほりぐち・さだあき)先生
愛世会愛誠病院・下肢静脈瘤センター
2002年帝京大学医学部卒業、2008年より愛誠病院にて血管外科医として勤務しながら整形外科と漢方を学ぶ。
血管外科の外来で漢方薬を使うようになってから、本格的に漢方を学ぶようになり、2010年より血管外科と漢方内科を兼務。
日本外科学会専門医、日本脈管学会専門医。

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