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いつも汗をかいていて、風呂では蕁麻疹が出るという営業マン

公開日:2011.10.11

いつも汗をかいていて、風呂では蕁麻疹が出るという営業マン

大上さん(仮名)、20歳代男性。
営業で走り回るサラリーマン。学生時代から青梅市に住んでいる。お昼は大好きなカレーの食べ歩きをしている。いつも額の汗を白いハンカチで拭きながら営業する姿から「青梅のハンカチ王子」と呼ばれている(とは本人の談)。
肥満型、175cm 92kg、BMI=30.0、BMI 20.2(BMI=体重kg/(身長m)2: 20<BMI<24)

外来診察室で・・・

 金曜日の夕方遅くに外来へ現れた男性は、大きなお腹で今にもはじけそうな身体を小さくして診察室へ入ってきた。

大上さん
「10月になったのに、暑い日が続きますねぇ」
わたし
「えぇ、外で働く方々は大変ですよね」
大上さん
「わたしも営業なものですから、毎日、汗だくですよ」
わたし
(カルテの住所欄を見ながら)「青梅から毎日都内まで通勤ですか?」

大上さん
「2時間かけて電車で通っています。今年の夏は冷房が余り効いてなくて苦労しましたよ」

 色々と話を伺い、診察室へ入ってこられてから5分以上が経過した。しかし、未だに汗が首筋へ流れ、頬を上気させている。彼が入ってきて診察室の温度が、少し上がったようにも感じる。

わたし
「それで、体調はいかがです?」
大上さん
「それがこのところ風呂に入ると蕁麻疹(じんましん)がでて体中痒くて仕方がないんですよ。薬局で塗り薬を買って使っているんですが、なかなか良くならなくて困っています」
わたし
「以前に、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などありませんでしたか?」
大上さん
「小さい頃から健康優良児で病気とは無縁でした。いまも、ちょっと太ってはいますが、休みの日は友人とフットサルをやってるんですよ」
わたし
「いいですね!運動をおやりになっているのは!」
大上さん
「はい、その後に仲間と飲むビールほど美味しいものはありませんよ」
わたし
「う~ん、そうですか。でも、大上さん、意外とお酒、弱くないですか?」
大上さん
「・・・・・はい、すぐに顔が紅くなってしまい、少し飲み過ぎると翌朝の電車は地獄で、頭痛との戦いです」
わたし
「そうですか、わかりました。大上さんの病気」
大上さん
「本当ですか?!」

 漢方医学理論で、「寒熱」としてとらえることが出来る病態と考えた。頭から湯気が出ているように見える大上さんの風貌は、額や頬が紅潮し、まるで火が付いているようである。身体の中の熱が全身から汗になって出てきている。そんな状態でお風呂に入り、さらに身体を温めたことで熱の逃げ場として皮膚に蕁麻疹という状態を起こしてしまった。まさに熱証である。

処方

 わたしは、『外台秘要方』※1に「熱毒を直解し酷熱を除く」とある黄連解毒湯(おうれんげどくとう)を処方した。その後、2週間経って、それまで便秘だったのが改善し、4週間後には蕁麻疹が出なくなった。ついには6週間後に来院した大上さんが、「最近、少しからだが軽くなってきました。朝の頭痛、気にならなくなったんです」と嬉しそうに話す姿をみて、「“青梅のハンカチ王子”を、卒業する日も近そうですね」と心の中でつぶやいた。

※1げだいひようほう:8世紀の中国で唐王朝の役人であった王燾(おうとう)が752年に唐代の医学書を整理編集し全40巻、104問にまとめたもの

まとめ

  1. 汗は体温調節や精神的ストレスによって発汗される。
  2. 二日酔いの予防には、黄連解毒湯を飲酒前に内服する。
  3. 黄連解毒湯は「喀血、吐血、下血、脳溢血、高血圧、心悸亢進、ノイローゼ、皮膚そう痒症、胃炎」に適応。
今津嘉宏(いまづ・よしひろ)先生
芝大門 いまづクリニック 院長
1988年藤田保健衛生大学医学部 卒業、1991年慶應義塾大学医学部外科 助手、2005年恩賜財団東京都済生会中央病院外科 副医長、2009年慶應義塾大学医学部漢方医学センター 助教、2011年北里大学薬学部 非常勤講師、薬学教育センター社会薬学部門 講座研究員、2011年麻布ミューズクリニック 院長、2013年芝大門 いまづクリニック 院長

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