漢方薬の活躍:医療費の負担を軽くするケース
より安全な薬を効果的に使用したいという思いは、患者さんも医療関係者も同じです。さらに、患者さんにとっては、経済的な負担が軽いことも治療継続の上では大切な要素です。1976年以降、多くの医療用漢方製剤が健康保険で使えるようになったことで、漢方薬による治療が受けやすくなりました。
また、漢方薬は(国の負担分も含めた)医療費全体の軽減においても、メリットがあるケースが少なくありません。その理由の一つは、漢方薬以外の薬剤では一般的に、それぞれの症状に対して1種類ずつの薬を服用するのに対して、漢方薬では1つの薬でさまざまな症状に対応することが可能だからです。
例えば、風邪にかかった患者さんの医療費の調査を見てみましょう。「いわゆる西洋薬のみ」「いわゆる西洋薬と漢方薬の併用」「漢方薬のみ」の3グループで、「薬剤数」「治療期間」と、それに対する「平均薬剤費」「平均総薬剤費」を比較すると、すべてにおいて漢方薬のみを適用したグループが優れていたという結果が出ています。※1
また、長期入院している患者さんのグループ(療養型病床群)で、「いわゆる西洋薬のみ」と「いわゆる西洋薬と漢方薬を併用した場合」の薬剤費の変化に関する調査もあります。1日あたりの薬剤費は、漢方薬を併用した場合の方が減少しました。ちなみに、減少した薬剤費の中で最も大きな割合を占めたのは抗生剤でした※2。このケースでは、調査対象の患者さんは高齢者の比率が高いため、漢方薬の併用で免疫能力が高まって、感染症にかかる割合が低下したのではないかと考えられます。
※1:赤瀬朋秀ほか『かぜ症候群における薬剤費の薬剤疫学および経済学的検討…漢方薬と西洋薬の経済性における比較研究』
※2:下手公一ほか『医薬情報 NO113』