【抑肝散】認知症の周辺症状の改善効果/論文の概要
公開日:2010.06.12
カテゴリー:特集・漢方の実力
論文の概要
- <論文タイトル>
認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療における漢方薬・抑肝散のランダム化クロスオーバー試験 - A randomized cross-over study of a traditional Japanese medicine (kampo), yokukansan, in the treatment of the behavioural and psychological symptoms of dementia.
Mizukami K, et al. Int J Neuropsychopharmacol. 2009; 12: 191-199.
- 目的
- BPSD治療における漢方薬・抑肝散の有効性と安全性を評価する
- 研究デザイン
- ランダム化クロスオーバー試験
- セッティング
- 日本国内の20の医療機関
- 対象
- アルツハイマー病(AD)(混合型認知症を含む)あるいはレビー小体型認知症(DLB)と診断された106名。外来患者は59名(平均年齢80.6±3.9歳、AD48名・DLB11名)、入院患者47名(平均年齢78.5±6.7歳、AD43名、DLB4名)
- 介入
- 患者をA群(54名)とB群(52名)にランダムに振り分け、A群では最初の連続4週間(Ⅰ期)に抑肝散7.5g/日(分3)を投与し、次の連続4週間(Ⅱ期)は非投与とした。B群では、Ⅰ期は非投与、Ⅱ期は抑肝散7.5g/日(分3)を投与した。
- 主な評価項目
- BPSD(NPIで評価)、認知機能(MMSEで評価)、ADL(外来患者ではIADL、入院患者ではBarthel Indexで評価)、有害事象の発現
- 結果
- 全体のNPIスコア平均値は、抑肝散投与により両期ともに有意に改善した(Ⅰ期:p=0.040、Ⅱ期:p=0.048)。A・B群とも、抑肝散投与期間にはNPIスコア平均値は有意に改善したが(A群:p=0.002、B群:p=0.007)、非投与期間では改善が認められなかった。NPIのサブスケールでは、妄想、幻覚、興奮/攻撃性、抑うつ、不安、焦燥感/易刺激性で、改善が有意であった。A群では、抑肝散の効果は投与中止後1ヵ月間持続していた。抑肝散は認知機能、ADLには影響を与えなかった。重篤な有害事象は観察されなかった。
- 結論
- 抑肝散はBPSDを伴う認知症患者に対し、効果的かつ安全性の高い治療法であることが示唆される
図2:BPSDの改善