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ダイエットに効果的な漢方薬と選び方を紹介

公開日:2023.05.24 更新日:2024.12.10
カテゴリー:病気と漢方 監修:宮本信宏先生(出雲漢方クリニック 院長、島根大学医学部漢方医学 臨床教授)

「漢方 ダイエット」でネット検索すれば、瞬時に数百万件もの情報がヒットする昨今、店頭のみならず通販などで手軽に購入できるダイエット関連の漢方薬も増えています。そんな今の時代にこそ、漢方とダイエットの正しい関係を再認識しておきたいものです。ここでは、漢方薬でダイエットを始める前に知っておきたいこと、ダイエットに効果的な漢方薬と選び方、漢方薬の効果を高める生活習慣についてやさしく解説します。

漢方薬でダイエットを始める前に

「肥満は万病のもと」という言葉があるように、肥満はさまざまな不調の原因となります。そうした体調不良は、肥満の解消とともに治まっていくことが期待できます(例:痩せることで高血圧症が改善)。逆に、漢方薬などにより体調不良が改善することで、肥満が解消されるケースもあります。

漢方薬と西洋薬の違い

一般的に西洋薬は、特定の病気に対して普遍的に効くように、科学的(近代理論)に基づいて合成された単一成分が配合されています。病気の診断に合った西洋薬を使えば、一定の確率で効果が出るように作られています。

一方、漢方薬は哲学思想(漢方理論)と経験をもとに、天然由来の生薬を複数組み合せることによって多くの成分を含有した薬で、個人の体質や特徴(証)に基づいて処方されます。

漢方薬は、西洋医学では診断のつかない体調不良(不定愁訴や自律神経失調症など)がある場合や、複数の症状が出ている場合に役立つことがあります。ただし、効果を得るためには、その人に合った漢方薬を見つけることが大切です。また、漢方薬だからといって副作用が起こらないわけではありません。医薬品である以上、西洋薬同様に服薬にあたっては医師の指示に従い、副作用に気をつける必要があります。

漢方薬がダイエットにおすすめである理由

漢方薬を使いながらダイエットするメリットは、漢方薬によって体調を整えて不快な症状(頭痛や肩こり、腰痛、高血圧など)を改善させながら減量に取り組めることです。

漢方で体調を整えることによって、生活習慣の見直しにも前向きになれます。糖質制限が守れると、より痩せやすくなります。生活習慣を改善すれば、リバウンドもしにくいと考えられます。

肥満があり心身に不調がある方は、漢方薬を使ったダイエットで効果が実感できる可能性があります。ただし、肥満がなく不調もない方が美容を目的としてダイエットを行う場合は、漢方薬ではあまり効果を実感できないかもしれません。

ダイエットに効果的な漢方薬と選び方

漢方薬を使ったダイエットは、肥満の解消に留まらず、その根本にある不調の解消を本質とします。漢方薬はその人の「証」(体質や特徴)に合わせて使い分けることが大切です。証はいくつかありますが、ここでは2つのタイプについて向いている漢方薬を紹介します。

脾気虚(虚証)タイプに向いている漢方薬

脾気虚(虚証)とは、心身に必要なエネルギー(気)が不足しているタイプのことです。主な自覚症状として、疲れやすい、胃腸が弱い、水分代謝が悪くむくみやすい(水滞)などがあります。

このタイプの人がダイエットしたいときによく使われる漢方薬は、五苓散(ごれいさん)と補中益気湯(ほちゅうえっきとう)です。体の水分の分布を適切にしてむくみを解消する五苓散と、自律神経を調整して興奮を鎮め、異常に亢進した食欲(食べ過ぎ)を正常にする働きもあるとされる補中益気湯を併用します。

補中益気湯で効果が得られず、イライラや過度の食欲が制御できない場合は、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)が選ばれることもあります。

瘀血(実証)タイプに向いている漢方薬

瘀血(実証)とは、体に不要なもの(瘀血)が排出されないため、血流などのめぐりが悪いタイプです。主な自覚症状として、肩こり、腰痛、便秘、あざが治りにくい、顔色が浅黒いなどがあります。

実証タイプの人の漢方薬選びでは、便秘の有無がポイントになります。便秘がある場合は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)がよく使われます。

便秘がひどく腹部膨満がある場合には六君子湯(りっくんしとう)や大建中湯(だいけんちゅうとう)を併用することもあります。

ダイエットによく使われる漢方薬

ダイエット、つまり肥満の解消に使われることの多い漢方薬には以下のようなものがあります。

五苓散(ごれいさん)

五苓散には、体の水分の分布を適切にしてむくみを解消するという作用があります。肥満がある人の中には、水分を取り過ぎていたり、体内での水のめぐりが滞っていたりすることが原因で体重が増えている場合があります。水のめぐりが悪いと、頭痛やめまい、吐き気や下痢をしやすくなります。天候や気圧に伴って症状が変化しやすいことも特徴です。このような方には五苓散がよく使われます。

桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

桃核承気湯は、日頃から便秘ぎみで、のぼせやすい人でよく使われます。便秘がちの人は全身に栄養や熱を運ぶ「血」のめぐりが滞っていることが多いです。また、生命エネルギーである「気」が滞るとのぼせやすくなります。桃核承気湯は血や気のめぐりを改善することで、便秘が一因となっている肥満を解消する方向に働きます。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

桂枝茯苓丸は、便秘はないものの、のぼせやすい人でよく使われます。このような人では生命エネルギーである「気」が頭の方にのぼり、全身に栄養や熱を運ぶ「血」が滞るという特徴が見られます。桂枝茯苓丸には気を降ろし、血をめぐらせる作用があります。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

防風通聖散はお腹まわりに脂肪が多く、便秘がちの人に使われることでよく知られています。防風通聖散は身体のエネルギー消費を高めて脂肪の分解や燃焼を促します。
ただし、防風通聖散には大黄(だいおう)や麻黄(まおう)、黄芩(オウゴン)という生薬が含まれており、胃腸が弱い人や、食欲不振や吐き気、嘔吐、下痢などを起こしやすい人には向いておらず、肝障害などの報告もあり、医療機関での定期的な採血検査が推奨されています。

漢方薬を服用する際の注意点

漢方薬には数多くの種類があり、その人の「証」(体質や特徴)に合わせて使い分けるのが大切です。体質に合っているかわからない漢方薬を自己判断で飲むのは、効果が出ない可能性が高いだけでなく、健康を害する可能性もあります。ダイエットのために漢方薬を購入する前には、医師・薬剤師に相談してからにしましょう。

中にはパッと見ただけでは漢方薬だとわからない、サプリメントのような名称のものも多くあります。また、肥満症の改善を謳う医薬品の中には、防風通聖散などの気をつけるべき副作用が比較的多いとされる漢方薬を主成分とした商品も存在しますので気をつけましょう。

漢方に限らず、自分に合っていない薬、効果が出ない薬は飲まなくてよいのです。飲んで何らかの効果が得られているのであればいいかもしれませんが、効果がないのに漫然と続けることはおすすめできません。

漢方薬の効果を高める生活習慣

ダイエットに効くとされる漢方薬を飲むだけでは痩せることはできません。漢方薬の力を借りて体調を整えながら、糖質を制限すること、身体を冷やさないようにすること、運動をすることが重要です。

適切な食事管理(糖質制限)

漢方薬の服用と並行して、糖質制限を行うことをおすすめします。過度な糖質制限は、体調不良の原因となる可能性がありますので、目安としては、普段食べているご飯や麺類、パン、お菓子などの糖質を半分にして減らした分、肉類や魚類を摂るようにするとよいでしょう。これよりもっと糖質を減らしたい場合は、医師や薬剤師、栄養士に相談しながら行うようにしてください。

体を冷やさない

漢方医学では、太った人は身体に余分なものを溜め込んでいるにもかかわらず、気・血・水のめぐりが悪くなっていて身体の外に余分なものを出しにくくなっている状態であると考えます。特に「水」が滞った状態を「水太り」といいます。

体が冷えると気・血・水のめぐりが悪くなるとともに、代謝機能が低下して、ますます冷えるという悪循環に陥ります。ダイエットをしている人は身体を冷やさないようにすることが大切です。

熱いお湯で漢方薬を溶かして飲んだり、軽い筋肉トレーニングを追加すると良いでしょう。

運動で痩せやすい身体に

ダイエットのために有酸素運動(ジョギングやウォーキングなど)を行うことも大切ですが、それに筋肉トレーニングも付け加えることをおすすめします。特に大きい筋肉を鍛えられるスクワットがおすすめです。慣れないうちは回数を少なめ(5回程度)にして、こまめに行いましょう。筋肉量が増えれば基礎代謝が高まって、痩せやすい身体になります。

しかし、ふだんから運動習慣のない人は急に運動し始めても続かないことが多いものです。少し痩せてくると、身体が動かしやすくなって、運動したくなる人が多いようですので、まずは、むくみ・便秘の解消や糖質制限を行って、効果を実感できたら、運動をプラスするという方法もあります。

自分に合った漢方薬を使いながら、身体の不調や生活習慣を改善することで健康的にダイエットをしていきましょう。

(取材:岩井浩)

自己判断による過度の糖質制限は、体調不良の原因となる可能性があります。糖質制限を行う際は、医師・薬剤師の指示に従うようにしてください。

宮本信宏(みやもと のぶひろ)先生
出雲漢方クリニック 院長、島根大学医学部漢方医学 臨床教授

高知医科大学医学部卒業後、京都大学胸部疾患研究所にて胸部外科研修医に。京都大学呼吸器外科、ミネソタ州 Mayo Clinic、ミシガン大学、島根大学医学部循環器・呼吸器外科講座助教、同大医学部附属病院呼吸器外科 副診療科長。同院外科漢方外来開設後、安来第一病院 呼吸器外科部長等を経て現職。日本外科学会 認定外科専門医、日本胸部外科学会 胸部外科認定医、日本東洋医学会 島根県部会長、日本漢方医学教育協議会 幹事。

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