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【連載】冷えに効果的な足湯の方法、知っていますか?│漢方医学の知恵で心と体が整う養生カレンダー

公開日:2023.04.27
カテゴリー:病気と漢方

「漢方」というと、漢方薬を思い浮かべる人も多いことでしょう。しかし実はそれだけではありません。体によいことを取り入れる「養生」も漢方(医学)のひとつです。このコーナーでは、4回にわたり養生についてお伝えしていきます。春の訪れを感じつつも、まだ「冷え」を感じる今日この頃。養生に造詣の深い泉州統合クリニック院長の中田英之先生に、冷えに効果的な「足湯」の方法について伺いました。

足湯で期待できる効果とは


図 全身の血管

内臓の冷えは、消化力低下につながります。足湯の主な目的は、冷えた内臓を温めて消化力を上げることにあります。足湯をすることで、まず下肢静脈を流れる血液が温められます。
足湯によって温められた血液は、足元から骨盤内を通り、体幹の深いところを通って心臓に戻ってくるときに内臓を温めます(図)。

私たちは、食物を食べて消化し、それを、身体を動かすエネルギーとして利用することで生きています。消化力低下は、身心全機能の低下を意味し、消化力向上は、身心全機能の向上を意味します。また、骨盤内に子宮がある女性においては、冷えは子宮の機能低下や月経痛の悪化の原因ともなりえます。足湯によって冷えが取れることで、月経痛の改善も期待できます。

自宅でできる「足湯」実践のポイント

では、具体的な実践方法をご紹介しましょう。

冷え改善のための入浴法

① 42度くらいの少し高い温度でお風呂にお湯を張る
② 服を着たまま、裾を上げて膝から下を湯につけ、汗がじわっと出てくるまで足を湯につける
③ その後サッと全身浴をする(足湯だけでもOK)
④ 入浴後は足首に風呂桶1杯分の水をかけて出る

※冷えがひどいときには、①と②を朝晩行うとよい

服を着たまま、膝から下までつけるのがポイントです。熱移動の効率は表面積に比例しますから、ふくらはぎの真ん中くらいまでの高さまでの足湯だと、膝までつけた足湯と比べ、温める効率は1/4になってしまいます。
浴槽のヘリに座るのが痛い場合は、タオルを置いてその上に座る、スポンジを敷くなどの工夫をしてみてください。なお、腰までつかる半身浴にならないように気をつけてください。お湯にしっかり浸かってしまうと、内臓がしっかり温まる前にのぼせてしまって、汗が出てしまうでしょう。また、消化力が落ちて体力が低下している人は、全身浴だと疲れてしまうこともあります。
汗がじわっと出てきたら、内臓が温まったサインだと考えられます。体が冷えている人は、汗が出るまで時間がかかります。なかなか汗が出ないときは、1度ずつお湯の温度を上げていきましょう。ただ、決して汗をかくこと自体が目的ではありません。

足湯のあとにお風呂に浸かりたい人は浸かりましょう。ちなみに、足湯自体の効果は、入浴剤の有無ではあまり変わりません。入れてもよいのですが、香りなどでリラックスするためのものと考えましょう。一方、全身浴の際は目的に応じた薬湯にすることは大いに意味があります。

「足湯」であることのメリット

さて、そもそもなぜ暖房などでなく「お湯」なのでしょうか。
まず、空気を介した暖房より、お湯を経由するほうが圧倒的に熱移動効率は高いです。暖房はあくまでも全身の皮膚表面から温めますので、内臓より表面が先に温まり、内臓が温まる前に暑さに耐えられなくなってしまいます。
たとえば冬のコタツは心地よいものですが、熱の効率で考えると、足湯の代わりにするにはコタツの温度を最高にして1~2時間入ることが必要になってしまいます。それほど足湯は温める効果が手軽に得られるものなのです。

反対に、足元の冷えは内臓の冷えにつながるため、足元を冷やさないことが大切です。暖かい空気は上に昇るため、足元を暖める床暖房やホットカーペットなどはよいでしょう。最近は暖かい空気を下向きに出せる空調設備もありますが、風に直接当たるのは、風邪(ふうじゃ)を受けることになりますので、その意味でも、体が弱っている時には特に、床暖房やオイルヒーターなどの「風を動かさない暖房」がベターです。なお、足元が冷えないように靴下を厚くする人もいますが、下肢の筋力が落ちていて冷えている場合は、靴下だけでは温まりません。足そのものが熱を発しないからです。冷えを解消することがまず大切です。

中田 英之(なかた ひでゆき)先生
泉州統合クリニック 院長
1995年防衛医科大学校卒業。防衛医科大学校病院産婦人科、慶応義塾大学医学部漢方医学講座、練馬総合病院 漢方医学センターを経て、2021年に泉州統合クリニックを開院。ライフワークである「養生」を重視した臨床を行っている。日本東洋医学会漢方専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。

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