漢方について相談できる病院検索 漢方について相談できる病院検索

いまづ先生の漢方講座 <ビジネスパーソン編> Vol.2 二日酔い

公開日:2022.03.24
カテゴリー:病気と漢方

現代を生きる私たちは、仕事に家事、育児と忙しい日々を送っています。最近ではさらにコロナ禍ということもあり、小さな不調を抱えつつも病院から足が遠のいている人も多いのではないでしょうか。
しかし、この慢性的な小さな不調が、あなたのさまざまなパフォーマンスの発揮を邪魔しているかもしれません。エナジードリンクやサプリメントに頼ってしまいがちな人は、これを機会に漢方の力を頼ってみてはいかがでしょうか。

コロナ渦で酒量が増えている!?

コロナ禍で、飲み会もめっきり少なくなってしまいました。家で過ごす時間が増えたことで、「家飲み」をする人も増えたのではないでしょうか。終電を気にせずリラックスして飲めることや、自粛生活のストレスからついつい飲む量が増えているという人も少なくないのではないかと思います。
実際、酒類メーカーが行った調査では、コロナ禍でお酒を飲む頻度が、「増えた」と回答した人が33.4%、飲む量についても29.5%の人が「増えた」と回答しています1)

ちなみに、厚生労働省が推進する「健康日本21(第2次)」によると、節度ある適度な一日の飲酒量は純アルコール量に換算すると男性で40g、女性で20gです2)。これはビールならロング缶1本(500mL)、ワインならグラス2杯弱程度(200mL)、日本酒は1合(180mL)です。

二日酔いになる人、ならない人

「この程度なら軽く飲めるな」と思う人と、「こんなに飲めない」と思う人がいたのではないかと思います。実は、お酒を飲んでも、翌日に二日酔いになる人とそうでない人がいます。それはもともとの体質による差です。お酒に強い、弱いという体質は、体内にあるアルコール脱水素酵素とアルデヒド脱水素酵素という2つの酵素の働きの強さに左右されます。アルコール脱水素酵素は、アルコールを分解し、アセトアルデヒドを出します。そのアセトアルデヒドをさらに分解するのが、アルデヒド脱水素酵素です。そして、二日酔いはアルコールの摂取量と分解力のバランスが崩れたために起こる症状です。
それぞれの酵素の働きの組み合わせで、お酒の強弱についておおまかに4つに分類できます。

アルコール脱水素酵素の働き アルデヒド脱水素酵素の働き 体質
強い 強い お酒を飲んでも酔わない
強い 弱い 酔えず、すぐに気持ち悪くなってしまう
弱い 強い アルデヒド脱水素酵素が強いため、気持ちよく酔える
弱い 弱い 気持ちよく酔えるが、アセトアルデヒドが蓄積し、二日酔いを起こす

二日酔いに効く漢方

ついつい飲みすぎてしまうという人は、適正な飲酒量を把握し守るとともに、漢方薬を味方につけましょう。
お酒を飲む前には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、翌日の朝、胸がムカムカするようなら半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を、むくみが気になったら五苓散(ごれいさん)を飲むとよいでしょう。黄連解毒湯に含まれる黄芩(おうごん)には、バイカリンとオウゴニンという成分が含まれ、抗炎症作用と胆汁分泌促進作用があることがわかっています。ほかにも、黄連(おうれん)には抗炎症作用、黄柏(おうばく)には末梢血管収縮作用、山梔子(さんさし)には、鎮痛、胆汁分泌促進作用があります。

そして黄連解毒湯に胃腸薬が加わったものが、半夏瀉心湯です。半夏瀉心湯は、アルコールの代謝を助け、胃腸の状態を整えてくれます。「瀉心」とはみぞおちのことで、ストレスなどでみぞおちに違和感があるときなどに用いられています。構成成分である半夏(はんげ)と乾姜(かんきょう)には吐き気を鎮める作用があり、この2つが組み合わさることでその効果は増強されます。また、人参は消化管の運動をよくする働きや抗疲労作用があります。

五苓散は水分バランスを整える生薬が、猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)、蒼朮(そうじゅつ)、沢瀉(たくしゃ)と4つも含まれています。そのため、むくみなどの水の代謝障害に用いられています。

なお、冷たいお酒は、二日酔いの原因になりやすいと言われます。低温の場合、吸収されるスピードが遅くなり、酔うまでに時間がかかり飲みすぎてしまいやすいからです。また、アルコール以外のものが含まれている醸造酒は、分解に時間がかかるため二日酔いになりやすいと考えられています。もちろん、その日の自分の体調にも左右されます。

これらを念頭に置きながら、上手にお酒と付き合っていきましょう。

今回の処方

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
五苓散(ごれいさん)

参考

今津嘉宏(いまづ よしひろ)先生
芝大門いまづクリニック院長

藤田保健衛生大学医学部卒業後に慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科、慶應義塾大学医学部漢方医学センター等を経て現職。日本がん治療認定医機構認定医・暫定教育医、日本外科学会専門医、日本東洋医学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医。

記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeとしての意見・見解を示すものではありません。
記事内容・画像・リンク先に含まれる情報は、記事公開/更新時点のものです。掲載されている記事や画像等の無断転載を禁じます。

外部サイトへ移動します

リンク先のウェブサイトは株式会社QLifeが運営するものではないこと、医療関係者専用であることをご了承ください。