柴苓湯(さいれいとう)
構成生薬
- 柴胡(さいこ)
- 沢瀉(たくしゃ)
- 半夏(はんげ)
- 黄芩(おうごん)
- 蒼朮(そうじゅつ)
- 大棗(たいそう)
- 猪苓(ちょれい)
- 人参(にんじん)
- 茯苓(ぶくりょう)
- 甘草(かんぞう)
- 桂皮(けいひ)
- 生姜(しょうきょう)
作用の特徴
体の内部で起こっている炎症やむくみに広く用いる
対象となる症状
- 炎症性腸疾患
- ネフローゼ症候群
- むくみ
- リンパ浮腫
解説
柴苓湯(さいれいとう)は、抗炎症作用を持つ小柴胡湯(しょうさいことう)と、主にアクアポリンという細胞の水の出入口をふさぐことで、むくみを急速に改善する作用を持つ五苓散(ごれいさん)を合わせた漢方薬といわれています。しかし、製法の違いから、柴苓湯のほうが小柴胡湯+五苓散よりも穏やかに効果が現れるため、慢性疾患に多く使われます。
クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患では、下痢の症状は半夏瀉心湯で抑えつつ、柴苓湯で炎症を治すという治療を行います。
副作用として、間質性肺炎が起こる可能性があるため、乾いた咳などが現れたときは使用を中止してすぐに医師へ相談してください。
エビデンス情報
術後尿道狭窄に対する柴苓湯の予防・治療効果
経尿道的前立腺切除術を施行した過活動膀胱を伴わない前立腺肥大症例で、受診当初から飲水指導・睡眠衛生指導を含めた生活指導が行われ、α遮断薬が投与されている142例に対し、柴苓湯投与群、非投与群とでランダム化比較試験を行いました。その結果、柴苓湯投与群で術後の尿道狭窄の発生率が有意に低下しました。また、非投与群中の8例の尿道狭窄に対しても柴苓湯投与により5例に改善が認められました1)。
外傷、手術後の下肢腫脹に対する柴苓湯の有効性
下肢の外傷および変形性疾患などの治療目的で入院した患者64例に対し、柴苓湯投与群と非投与群とでランダム化比較試験を行いました。その結果、柴苓湯非投与群が腫脹消退に要した日数は、術後あるいは受傷後平均59.4日以上、柴苓湯投与群では平均15.8日でした。腫脹比は、投与群は非投与群と比較し、術後1週から6週において有意に軽度であり、さらに、術前より柴苓湯を投与していた19例では腫脹消退までがさらに短く、平均9.5日で、うち10例は腫脹が発生しませんでした2)。